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残穢 住んではいけない部屋のYSKのレビュー・感想・評価

3.4
新しいホラー映画へ挑戦した意欲作

日本どころか世界中から称賛される「デスマッチ」の第一人者である葛西純氏がかつてインタビューで「一脚のイスで「死」を表現できるのが理想」と語ったことがありました
とはいうもののかつては有刺鉄線、画鋲が主流だったものが、蛍光灯が使われはじめカミソリ、注射器、芝刈り機などとデスマッチ界隈は過激さに拍車がかかる一方であります

同じようにホラーというジャンルでもいかに驚かせるか、怖がらせるかというところだけが取りざたされているように感じます
結果、以前にも感想を書いた『犬鳴村』のように怖さを感じさせなければいけない場面で笑ってしまうような模造品に溢れており、すでに日本のホラーには何も期待できない冬の時代が訪れている…ように感じます
記憶ではおそらくビートたけし氏だったのですが、例えばグルメリポートの際に料理を食べた一口目で「なんて美味しいんだ」と言うと、それを見た視聴者は自分にとって一番美味しかった料理を思い描くのに、その後「魚介のうま味が~」というコメントで魚介が苦手な人が見るのをやめ、「野菜の味が~」というと同じく野菜が苦手な人が離れてしまい、最終的にはほんの一握りの人しか満足しないという話をされていました
残念ながら巷にあふれかえっているホラー作品の多くは説明のしすぎであり、想像力で補うような作品はないと感じています、だって怖がらせることしか考えずに造形したオバケなんて趣向が少しでもずれたらただのメイクでしかありませんが、姿形はわからないけどすぐ後ろに何かがいるほうがよっぽど怖いじゃないですか
というか、その勇気がないから大きな音でごまかしているんだろ?

元来日本にはホラーの元祖であり始祖である「怪談」というお手本があり、その怖さの中心は視覚や聴覚に訴えかける怖さではなく、自らが思い描いてしまう身の毛もよだつような得体の知れなさなのです

残念ながらこの作品には「怖さ」こそが今一歩足りていませんでしたが、日本に脈々と受け継がれてきた怪談の精神を感じられる良作だったと思います
最後?何も知らないし何も見ていませんが犯人の犯沢さんがどうかしましたか?

あと一点、床をこすれる着物の帯の揺れが激しすぎて笑っちゃいました
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