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氷の花火 山口小夜子のnaoのネタバレレビュー・内容・結末

氷の花火 山口小夜子(2015年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

資生堂時代を知らない私にとって小夜子さん自体が新鮮。
アジアンビューティーだとかパリコレモデルなんて言葉じゃ形容できない人だった。まさに表現者。モデルという仕事に拘ってなかった。メジャーだろうがアンダーグラウンドだろうが自分の審美眼で路を決めて、そこからよそ見もせずに進んでた。
小夜子さんとセルジュルタンスの関係性も羨ましくてたまらない。美を追求していたら言葉も要らず、時間も忘れる。だからこそ「美を追求するのは苦しいこと」という小夜子さんの言葉が重くて滲みる。
小夜子さんが作った都立高校の制服も欲しくてたまらない。オークションに出てるなら競り落としたいくらい。細部までディティールに凝ったブレザーに、カラーがパターンになってるプリーツスカート。欲しい。辛い。その高校で小夜子さんが講演したときのスタイリングも本当に素敵だった。講演を聴いてる高校生も私と同じように小夜子さんのことを知らないんだと思うともどかしかった。
イッセイミヤケのコレクションでプリーツが入った衣装を着てたランウェイとパリコレのラストコレクションになってしまったKENZOのランウェイが流れたときは鳥肌が立って涙が出てた。小夜子さんと衣装があまりに美しくて。コレクションを静止画で見ることが多いからかもしれないけど、衣装とモデルの美しさがあそこまで共存できることに震えた。あの細いステージで表現できることの幅があんなにも広いことに震えた。
こんなにも素敵な人がいたことに気づいたのが亡くなった7年後なんてやるせない。勅使河原三郎のワークショップ行かなかったことも後悔したし、周りからの視線だとか突発的な躊躇で諦めたこと全部後悔した。やりたいことも一気に増えた。もっと正直になりたいと思った。
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