持て余す

セーラー服と機関銃 卒業の持て余すのネタバレレビュー・内容・結末

セーラー服と機関銃 卒業(2016年製作の映画)
2.8

このレビューはネタバレを含みます

薬師丸ひろ子の超有名作はおそらくテレビで見たことがある……と思う程度で、頭の中にある「セーラー服と機関銃」のイメージもあの掃射シーンからの名台詞ぐらいしかない。

なので、橋本環奈版のこの作がリメイクなのか続編なのかどういう位置づけなのかも知らないし、どういう違いがあるのかも判らない。

ただ、この映画なんだか少し独特。

ふたつのヤクザ組織が登場するのだけど、ひと組はもはや看板を返上して、客のいない野暮ったいカフェを運営している。こちらのトップが橋本環奈。もう一方は伊武雅刀が率いる田舎ヤクザなのだけど、これはやや牧歌的ではあるものの一般的なイメージのヤクザの団体。

通常、ふたつのヤクザ組織が登場すればアウトレイジな感じになるものだと思うのだけど、このふた組のヤクザを潰そうと目論む黒幕がいる。そいつらにいいようにやられて、ふた組ともにみるみる力を失っていく。

この黒幕、この街の問題を解消したいと主張するし、ヤクザなんていなくなるべきだと非常に倫理的なことを言い募る。通常なら主人公側が言いそうなことを口にしながら、暴力的に街を浄化しようとする。まるで「少年ジャンプ」の主人公なのだが、この物語の主人公はヤクザものの方なので、ジャンプ倫理は蹴散らされる。

極めて暴力的に黒幕が殺害され、ヤクザ側が勝って物語は終息を迎えるのだけど、街には平和が戻ってくる。舞台が都会ならばあり得ない展開。構成員が殺されたりもしたけれど、星泉は元気に暮らしていくという、アウトレイジの三浦友和ポジション。

そう言えば、主人公の星泉の友だちはクラスメイトの男子生徒3人(ひとりは北村匠海だけれど基本的にはさえない男子たち)ぐらいしか描かれなかった。あの顔面偏差値ならば、スクールカーストの頂上に君臨して当たり前のように思ったし、どういう演出意図なのだろうと思った。

ただ考えてみれば、元とは言え、田舎の小さなものと言えど、ヤクザ組織の関係者となれば、人が寄り付かなくなるものなのかもしれない。そうするとああいう地味目の男子のみの交友関係というのは却ってリアルなのかもしれないとも感じた。

独特なのはエンディングもで、BGMではなく卒業シーンからの流れで橋本環奈があの名曲を歌い始めて少しびっくりする。それも、映画自体が長尺のプロモーションビデオだと考えれば不自然でもないし、初めからそういう意図で作られたのだろうなあと推察。

歌声は話す声と違って案外と澄んでいるのが意外。

元々の物語の構成が変わっているところへ、アイドル女優のプロモーションをぶち込んだ結果、少し歪んだ映画が生まれた模様。上出来とは言いかねます。
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