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ちはやふる 下の句のEditingTellUsのレビュー・感想・評価

ちはやふる 下の句(2016年製作の映画)
3.3
上の句のテーマにより磨きをかけたまっすぐな作品。
ちょっとこそばゆくなるようなストーリーでしたが、上の句よりも振り切っていて良かったです。たとえ、途中で「あれ?」って思うようなことがあったとしても、エンディングがわかりきったものだったとしても、このクライマックスはずるい。120%涙腺をノックするし、スクリーンにかじりついてしまう。本当に部活もの+ジャンプ魂は邦画では最強なんだということを思い知らされました。

本当に同じ監督かよ、というほどブロッキングのレベルが上の句に比べて高かった。ステージの上下左右前後を広く使い、キャラクターたちをスクリーン上で踊らせるようなブロッキングは、単純に見ていて楽しかったですし、そのブロッキングでシーンから感情が伝わってきました。特に最初の千早と太一が新に会いに行くシーンで、電車を降りホームに立つ2人のシーンは完璧だったと思います。そこから複雑な3人での会話シーンを見事に乗り越えてからのInciting Incident。この10分は見事。
その後もフレームの中でのキャラクターの動きをしつこく捉えた果敢なカメラワークには驚きました。これを邦画でやるのは難しかっただろうと思います。それほどまでに素晴らしかった。

脚本のことに関していうと、コミック原作の映画の悪い癖が目立ってしまったのかなという印象。物語を完結させるためには、コミック原作のストーリーからどうしても削除しなければならないシーンが出てきてしまいます。そこを大きく削って、低い位置からオリジナルで創り上げていくというギャンブルもありますが、多くのコミック原作はキーとなる部分だけを繋ぎ合わせたような作りになってしまうことが多いです。この作品もそうでした。
それだけに、コミックちっくな演出が浮いてしまい、肝心なシーンが興ざめ。視聴者が急に夢から覚めたように映画の世界から一歩引いて見てしまうような感じ。ポップコーンが一番消費される時間。映画では一番避けなければいけないこと。それが今作では2、3度あった気がします。太一が一人になりそうなところを部員に気づかされるシーンと、雨のシーン。

あとはカラー。今回は完全に失敗。夜のシーンがないだけに、朝・昼・夕方の時間を使い分けなければいけない。しかし、予算上ゴールデンアワーに撮影を続けることもできない。それゆえ解決するためにとった方法は、昼は空の青、夕方は夕焼けのオレンジでシーンを表現するということ。それがなんともチープ。爽やかなシーンでの昼を表現した青は、特有のディヒュージョンネットを使ったハイキーな照明と相まって、逆に寂しさのようなものも感じでしまいました。インドアとアウトドアが混在したシーンが多くあるだけに難しい撮影だっただろうが。。。。

邦画の業界ではハリウッドを超える才能が必要になる。チームワークと管理。まだ遅くない。
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