メそロン

スパイダーマン:ホームカミングのメそロンのネタバレレビュー・内容・結末

4.2

このレビューはネタバレを含みます

‪スパイダーマン:ホームカミング‬
ピーターが子供であることを最大限活かし、他のMCU作品とも、過去のスパイダーマン映画とも明確に差別化。
映像・物語共にまったく新しいスパイダーマン映画を作り上げてる。
筋の通った物語と愛らしいキャラ、安定の映像美が楽しいがアクションは控えめ。

わかりやすい過去作との差は、なんとスパイディーを象徴するビルの間をウェブでグラインドする画がほぼ無い!

また、あえて過去作を彷彿とさせるシーンを描きながら、そのシーンの意味をまったく違うものにしているのが面白い。
いずれもただのパロディー以上に、その違いから本作の個性を感じさせる、粋なシーンだ。

ウェブスイングシーンが無いことにも繋がるが、
本作は“地に足をつける”という言葉がキーワードになっていて、
浮き足立ち、落ち込み、不恰好でも必死に走り回り、地面を踏みしめ立ち上がり、地に足のついた“親愛なる隣人”を選ぶピーターの物語と映像の軸…と言うより“地”になっている(字幕のおかげかもしれんが)。

その“地”の上に、飛び回るヴァルチャー、アイアンマンが登場し、それぞれ別の形で“地に着く”ことになり、ピーターの選択を際立たせる。
最終戦の舞台が墜落する飛行機なのもそういうことだろう。
まさに地に足のついた構造だ。

白眉はピーターが子供であることを活かした瓦礫のシーン。
アメスパで子供に「君もスパイダーマンだ」と声を掛け救うくだりがあったが、なんと今回は水面に映った自分自身に「スパイダーマンだろ!」と言い聞かせピンチに立ち上がる。
絶望の中で、彼はスパイダーマンに救われ、同時にスパイダーマンとして人を救い、自身が何者なのかを自覚する。
子供がヒーローになる瞬間を、スパイダーマンの文脈を踏まえつつ新しい物語として描く、本作を象徴するシーンと言っていいだろう。
いやほんと熱かった。

あとは今までのスパイダーマンでは肉体の変化に戸惑うシーンがお馴染みだったが、今回はそこは省略しスーツの機能に戸惑い学習していくのがワクワクした。
使いこなすシーンは良い意味でゲーム的で、そこにも子供っぽさを感じられた。

そしてアニメEDは見た目も楽しいが、これもまた子供のヒーローという要素を活かした部分だと思うと、細部までの徹底に感心する。

キャスト陣も素晴らしかった。
トム・ホランドは新しいピーターとしての魅力も溢れてるが、ふとした時にトビー・マグワイアを彷彿とさせる表情をしていて妙な懐かしさがあった。
ネッド役のジェイコブ・バタロンは最高としか言えない。お前こそイスの男だ。

物足りなかったのは、スパイダーマン2やアメスパ2ほど泣けるようなエモーショナルなシーンは無かったことと、周りが優しすぎてご都合感を感じるのと、戦闘シーンの少なさ(ただこれは過去作との差別化になってる)。

そしてヒーローとしてのドラマに対して学園青春ドラマの薄さ。
ピーターはフラッシュにバカにされてムカついたり、リズに失礼なことをしてしまったりするが、葛藤らしい葛藤はかなり少ない。
友情も最初から安定してるので、人間関係もほぼ変わらない。
メイおばさんも含めて周りが結構甘いのでピンチにもならないし、特に何かを乗り越えたりもしない。
ヒーロー映画としてのクライマックスが青春映画としてのクライマックスにできればよかったんだけど、ヒロインの父親を悪役にしたわりにはそこまで至らなかった。
比べるもんでもないだろうけど、そういう面ではパワーレンジャーの方がずっと青春ヒーロー映画として面白かったと思う。
ただドラマが薄かろうとネッドとの日々は最高に面白いし、見てて幸せになれるので学園パート自体は楽しめた。

あとはヒーローの物語としての熱さもあと一歩、最終戦に向かう前に「ヒロインや友達のために戦いに行く」という部分をもっと強調してくれればさらに熱くなれたはず。

ということでMCUらしく安定して面白い映画だった。

あとパンフレットがとてもよく出来てるのでオススメ。
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