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COP CAR コップ・カーのnoteのネタバレレビュー・内容・結末

COP CAR コップ・カー(2015年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

田舎町で家出中の少年、トラヴィスとハリソンは森の中で一台のパトカーを見つける。車内でキーを見つけた二人は大はしゃぎでパトカーを暴走させる。だが、そのパトカーの持ち主クレッツァー保安官は私欲のためなら殺人すら行う恐ろしい人物だった…。

個性派俳優ケビン・ベーコンが出ている作品は大概面白い。
彼が主演・製作総指揮を務め、イタズラで警察車両を盗んだ少年たちが、恐ろしい悪徳保安官から執拗な追撃を受ける様を描いたサスペンスの佳作。
悪ガキ2人がパトカーを盗んだのをキッカケにとんでもないトラブルに巻き込まれるアイデア一発ものなのだが、余韻はまるでジュブナイルもの。
児童と成年の中間に見られる成長過程の足掻きみたいなものが懐かしく感じられる良作である。

少年たちが森で発見したパトカーは、悪徳保安官クレッツァーが殺した人間の死体処理のために停めていたもの。
やがて彼らはトランクの中に別の男を監禁されているのを発見する。
トランクの男ごと、パトカーが少年たちに盗まれたと知ったクレッツァーは無線で「俺の車だ、返せ。」と要求する。

殺された者やトランク内の男は何者か?
クレッツァー保安官はどんな犯罪に手を染めたのか?
そんな説明は一切無いのが潔い。
とにかく子どもたちが悪者に追い詰められ、ピンチになる状況をほぼリアルタイムで描くテンポ感が良い。

少年たちはトランクにいた男に「俺は被害者だ」とのコロっと騙され、パトカーに積んであった銃を奪われて今度は自分たちが車内に監禁されてしまう。
その辺の他人を信用したしまう浅はかさが、彼らの幼さを物語っている。

男は少年たちを使って無線で保安官を誘き出す。
男は風車の影に隠れて待ち伏せしていたが、角度が悪くて保安官を狙撃出来ない。
やがてパトカーを挟んで、保安官と男の撃ち合いが始まる。
パトカーの中で無力にもただ怯えるしかない少年たち。
通りすがりの女性をも巻き込んで、全員が被弾する惨事となる。
しかし、少年たちを助けに来る車など田舎道には見当たらない。

ロックされた車内から窓ガラスを割って、ハリソンは車外に脱出するが、もうひとりの少年トラヴィスは、拳銃をガラス窓に投げつけた際に、暴発した銃弾を腹に受ける。

ハリソンは苦しむトラヴィスを病院に連れていくためにパトカーを発進させ、暗い道を全速力で飛ばす。
サイレンを鳴らしながら…。

よりによってパトカーを盗んで走り回るなんて「馬鹿だな、コイツら」などと思ってしまう。
しかし、それは子ども特有の後先考えない冒険心だ。
無知であるが故に、何も恐れずに何でもできる強さと言ってもいい。

だが、無知であるが故に少年2人の行動はは相当危なっかしい。
パトカーにあった銃の威力を試すため、防弾チョッキを来て銃弾を受けてみようとするとか、閉じ込められたクルマから脱出しようと、安全装置がかかって引き金を弾けない拳銃をドアガラスに投げつけるとか。

反対に大人たちは、ヤンチャ放題しており、子どもたちと違って罪を自覚している。
その罪を隠そうと保身に走るのが滑稽だ。
その対比が鮮やかで、子どもたちには「こんな大人になってくれるなよ」などと思う。

悪者は死に、万事解決して良かったね…などと本作は安易なハッピー・エンドでは終わらない。
なにせ、負傷したトラヴィスをパトカーに乗せて車を飛ばし、ようやく街の灯りが見えてきたところで映画は終わる。
バッド・エンドとも言いにくい。
無事に病院に到着し、トラヴィスは助けられたかもしれないからだ。

だが、トラヴィスを助けようと勇気を出して車を飛ばすハリソンは、この苦い思い出を胸にこれから成長していくであろうという予感を与えてくれる。

パトカーを盗み、自業自得で事件に巻き込まれた挙げ句、自らは何も解決することなく逃走する。
「苦い思い出を通過儀礼として、大人へと成長していく」
自分のケツも拭けない少年の、この無力感こそが、ジュブナイルの余韻を放つ。

監督は後に新スパイダーマン三部作を世に放つジョン・ワッツ監督。
なるほど、唐突に力を持ったにも関わらず、何も変えられない無力感はスパイダーマンにも通じる。

低予算ながらサスペンスならではのハラハラ感、ブラックな笑いもあり、少年たちの成長物語でもある。
登場人物のキャラクターも立っている。
尺は短いながらも様々な角度から楽しめる作品である。
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