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COP CAR コップ・カーのbのネタバレレビュー・内容・結末

COP CAR コップ・カー(2015年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

【大人への反抗と肯定】

〈あらすじ〉
家出中のおよそ10歳くらいの悪ガキ二人が軽い好奇心でパトカー(コップ・カー)を盗んだことにより悪徳ベーコンとの追跡劇が始まる。

見てはいけないものを見てしまうのは大体「悪ガキ」と相場は決まっている彼らには秘密めいたものを嗅ぎつける能力があるからだ。これはある漫画の一説ですが、本作の主人公である悪ガキ達は見てはいけないものを見てしまいあるとんでもない目に遭ってしまいます。
本作は当初の予想に反しベーコンはあくまでも脇役であり、ジュブナイルもとい青春映画として傑出した作品でした....!簡単に表現するとスタンドバイミーでもっと凶悪な事態に巻き込まれたら....な映画とでも言うべきか。本作は非常に巧みな方法で子供時代の残酷な側面を提示した。つまり悪ガキ達がベーコンの手により壮絶な通過儀礼を体験することで大人になっていく物語です。

大人への反抗として家出しつつ、大人への憧れから卑語やパトカーを使うという相反する彼らの言動からも分かる通りこの物語は常に大人への反抗と肯定を描いていると思います。
彼らは旅の結果、大人たちの憧れるべきではない醜く恐ろしい姿を目撃する。しかし、ラストその大人へ、それでも助けを求めます。つまり本作は最終的に大人への反抗を捨て恐ろしく醜く滑稽でどうしょうもない『大人の世界』の肯定へとたどり着く。そうして彼らは大人になるのです。物語的にも行きて帰りし物語なので大人の世界に戻って行く構造になっています。

本作はジュブナイルではありますが、僕は敢えて青春映画と形容したい。ラスト、夜の荒野をヘッドライトのつかないパトカーで先の見えない暗闇の中を光を求めて懸命に疾走するシーンはこの映画が青春映画であることを象徴する超絶名シーン。僕の個人的な青春映画の定義として進路への迷いと決断が描かれてる映画は全て青春映画だと思っているのですが、本作はそれが描かれているので青春映画なのです。
前述したラストシーンは不安と恐怖にも負けずに大人になることを決断した勇猛果敢な姿に思わず感動します。このシーンはボビーに首ったけを彷彿とさせる死のにおいが充満する非常に苦い余韻が残る。もしくは中島みゆきのヘッドライト・テールライトですよ。こんなもん号泣しない方が無理がある。
映像的にも夜の切り取り方として暗闇にパトランプの赤と青の光が輝く非常に美しいものでした。最後に微かに灯る街の夜景にわずかばかりの希望を感じる。

他にも冒頭fuckと言うのを憚ったアイツが思わず口にせずにいられない状況になりfuckと口にする所とか『In The House - In A Heartbeat』がまた使われてるとか書きたい所いっぱいあるけど長くなるので敢えて省略します。

本監督がスパイダーマンの監督に抜擢されたのもこの作品の青春映画としての側面が評価されての事だろう。スパイダーマンは青春映画なので。物凄く期待が高まりました。
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