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ザ・サークルのbutasuのネタバレレビュー・内容・結末

ザ・サークル(2017年製作の映画)
2.5

このレビューはネタバレを含みます

エマ・ワトソンはとにかくお顔が強すぎるので中々何をやってもしっくりこない印象があったのだが、今回は完全にハマり役。かなり意思が強い新入社員、という役柄を見事にこなしていた。トム・ハンクスは悪役をやらせても存在感があって良い。

映画として何よりも演出が上手いと思う。SNSのわかりやすいビジュアライズにスピーディーな進行と、ある程度先が予測できるがゆえに悪い予感が広がっていく展開の見せ方は素晴らしい。SNSで全てを管理することの利便性と恐ろしさは、普段SNSを何気なく使っている我々に非常に身近なテーマであり、誰でも内容に引き込まれることだろう。

ただ、肝心のお話が何とも中途半端。そもそもこの手の映画はいつも同じような展開になり、目新しさがまるでない。毎回こればかり思うのだが、みんなそんなに馬鹿じゃないよ。いくら悪ノリしたからといってあんな人数が個人の誹謗中傷やプライバシーの侵害に賛成し加担するわけがない。人間ってSNSになると急にそんなに悪意に満ちるものなの?本当?主人公含めどいつもこいつもネットリテラシーが低すぎる。主人公は生活を全て生配信するが、現実的にありえないし、何週間も全世界で視聴数があれほど継続するものかね。すぐ飽きるだろう。主人公が提案する「サークルによる管理社会」に世論が大賛成なのもおかしい。プライバシーの問題だって昨今ますます厳しくなっているというのに、その点に関する議論は起こる気配がない。そして経営者も監視すべきだ、という誰もがすぐ思いつくであろうところに落とし所を設定し、細かいことはスルーしたまま映画は終わってしまう。問題提起とささやかな仕返しだけして、後は丸投げ。さすがにこれじゃスッキリしない。時代的にSNSを全否定する展開にはもっていけなかったのかもしれないが、それにしてもいくらでもやりようはあるだろうに。

登場人物たちが何を考えているのかイマイチよくわからないのも良くない。主人公は行動や感情が場面ごとにコロコロ変わりまるで一貫性が見られない。「大切な男友達が死んだのはサークルのせい」という考えで最後の仕返しに進んだのだろうが、普通に主人公のせいだと思う。主人公が調子こいたから彼は中傷を受けたのだし、主人公が自分の立場を守るために彼を死なせたのだ。なのに彼の死を悲しむばかりでまるで反省や後悔が見られないのは、本当にどうかと思った。重要なキャラクターであるはずのトム・ハンクス演じる経営者もただの"劣化版ジョブズ"アイコンでしかなく、彼自身の考えや人間性はまるで見えてこない。主人公に助言を与える影の実力者も、結局目的がよくわからないまま。「自由にやっている」とか言ってるけど、自由すぎてマジで意味がわからない。

あと急に夜中に湖でカヤックに乗ったり、友達が極端にやつれたり、ちょっと不自然な車の事故が起こったり、全体的に展開が雑で強引なのもかなり気になった。

結局、「SNSは気をつけて使おうね!」という誰もがわかりきっていることを、初めて気付いたかのように映画化したのが本作。初めてSNSに触れる初心者向け。今更そんな人がいるのかどうか知らないけど。
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