ゆず

ザ・サークルのゆずのレビュー・感想・評価

ザ・サークル(2017年製作の映画)
3.2
SF作品に分類されてもいるようだけど、サイエンス・フィクションというよりはソーシャル・フィアーのS・F。現代社会が進んでいる方向への警鐘を鳴らしているような感じだ。
大手IT企業<ザ・サークル>が開発した小型カメラは、ビー玉ほどの大きさで高精細、どこにでもくっつき、しかも安価というとってもスマートなカメラだ。
このカメラによって人の行けるあらゆる場所がネットで公開されるようになる。科学技術が人間に影響を与え、ある出来事を引き起こす。これはたしかにSFの側面だ。

憧れのサークルに入社するも、最初は精力的すぎる同僚たちに戸惑ったりしていたメイ(エマ・ワトソン)。
しかし、サークルのネットワークであらゆる情報がつながり、個人がユーザーに評価される生活の中で消極的だった意識が徐々に変わっていく。
小型カメラを身体や部屋にくっつけ、生活をすべて公開したメイは一躍人気者となるが…。

アカウンタビリティ(説明責任)を果たす上で<透明化>という言葉をメイはよく使った。中が見えるように壁を透明にするという意味だが、中身が透明になったら見えなくね?と思いながら観ていた。この辺りの表現の難しさは課題。
何を食べたか、どこへ行って誰と会ったか…。私たちがいま使っているSNSサービスも、ある意味で<透明化>を促す装置と言えるだろう。この映画は現実と地続きどころじゃない現在進行形みたいなところがある。

不思議なのは、何もかも開けっぴろげになるネットやSNSの進歩に警鐘を鳴らす一方で、技術革新を否定はしていなかったことだ。罪を憎んで人(ハード)を憎まず、ということだろうか。
むしろこの先に明るい未来が待ってるかのような、そんな余韻がある。その辺りはSFの良いところだと思ってるので、この映画を微妙!と斬ることはできないのだが。



11/14 ザ・サークル 字幕 @TOHOシネマズ仙台
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