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LBJ ケネディの意志を継いだ男のotomisanのレビュー・感想・評価

4.1
 クリントンが弾劾の崖っぷちに立たされたり、ブッシュが大コケしたりで大統領がまたまた不名誉の見本のように曝されたあと、余程憂慮されたか歴代大統領の実績を再評価する試みが米国の何誌だったかで紹介された事があって、意外にもL.ジョンソンとニクソン両氏が高評価された。この結果が広まり両者、特にLBJへの関心が高まったのを覚えている。もう十年以上前だと思う。この人の業績はWikiを見てもうっすら知れるが、なかなか人としての肉付けまでは手が回らない。
 で、この映画、まさに"粗にして野"とはその通り、"卑では無い"と豪語できるかどうか分からないが、怒号と根回し力を背に最少の議論で事をまとめ上げる与党最強議員を謳われながらハレルソンそっくりの不幸のせいかテレビの時代にそぐわず院外人気に恵まれない男の天命反転の模様を伝える。
 そうはいっても、なんで副大統領の口を受けたか実のところよく呑み込めない。心境を示す資料が十分でないのか知らんが、"力ある者に権力は集まる"の信念だけで、平時お飾りのような職を最高権力への外階段に作り替える意気で受諾したとも思えない。それでも、そんな態度がアメリカ人らしいとの事なのか?
 不明は不明として、大統領職を引き継げば意外なケネディ路線の継承で、公民権法成立に加えて偉大な社会を目指した「貧困との戦い」を掲げ成果を上げた。これら内政の成功が上述、再評価での好評なんだが、映画としては枠外、まだ先の事。
 ケネディ幕閣としてのジョンソンとは何者かは、レイシスト、ジョージアのラッセル議員との夕食での会話のくだりでよく分かる。雇用機会均等法に関して料理人ライト夫人を引き合いにラッセルを口説く政見の淀みなさに、角栄が設けた酒席で懐疑派を膝揉みして口説き落すという変な熱気とやらの話をひょっこり思い出してしまった。何にせよ、院内総務のまま敵対しても甲斐無し、副大統領として実績を上げるべく、公民権法成立への協力と引き換えに大統領に譲歩も協力も求め、かつてない副大統領として政治生命を肥やす事に一縷を賭けたというのが本当かと思った。やはりただものでない。
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