JIZE

ヴィジットのJIZEのレビュー・感想・評価

ヴィジット(2015年製作の映画)
3.3
ペンシルバニア州の祖父母が暮らす田舎町で休暇を利用し穏やかな1週間を過ごす予定だった姉弟が"ある約束"を破った事で異様な雰囲気に苛まれるファウンドフッテージ形式のスリラー映画!!元の基盤はグリム童話『ヘンゼルとグレーテル』を意識したそうで。主に子供が家を出て安全圏だと思えた場所が実は危険区域で事態が徐々に最悪な方向に様変わりする道筋とかは。シャマラン独特な寓話性に飛ぶ着想を得た動機に思えたね。まず結論を言えば,祖父母が醸す嫌なパラノイア性が持続する感じと善悪の認知を示す距離感の取り方が絶妙だったなと..少なくとも前半部のパラノイア性が減速せず不気味さが次第にエスカレートしてく部分はだいぶ好みだった。当初はコメディ路線で脚本を練ってたそうでね。予算も約6億円(500ドル)で製作され本作は超低予算映画の部類に。また主眼のホラー部分より副眼のジュブナイル要素の方が濃く余韻に残りましたね..要するに心に傷を抱えた子供たちが大人側を癒し最後には心を開眼するという部分で。まあ本作は幅広く見渡せば主に老齢や認知症など警鐘を踏む問題提起を孕んだ映画なのかと。POV手法で体裁を意識せず不恰好な位置関係で嫌な恐怖感を持続させる外連味は映画独特の味が出て好み。

→作品概要。
初めて出逢った祖父母の家に訪れた姉と弟,しかし2人は祖父母の奇怪な行動を目の当たりにし次第に不信感を募らせていく..。監督は『シックス・センス(1999年)』や『サイン(2002年)』のM・ナイト・シャマラン。また本作は大半が無名のキャスト勢で作られメジャー路線から低予算物として注目を集めた。

→ドキュメタリ構成との相関。
次に原題『The Visit』は主に"帰省"や"訪問"を意味し劇中の姉弟が祖父母の家に訪問する立場そのものを指しますね。またピンポイントで美点を挙げてけば,赤文字で1週間の各曜日が嫌な雰囲気を醸し出し文字盤で提示される演出や時間を進めるためにクロスフェードを使用し時間軸の明確性をボヤかさなかった点は演出面で1番好感が持てた。あと弟が自我を体現する手段でフリースタイルラップを度々披露する場面や最後の最後で姉が魅せる"事後変化"の魅せ方などジュブナイル要素の遊びが全編に効き本作をホラー映画だと釘打つ事は結果蓋を開けた際に首を縦に振り難い後味を残した。あと設定上で"姉が撮ったドキュメタリ映画=シャマランが撮る擬似ドキュメタリ"な重層ギミックな見方も取れ台詞や映像面で見返せば見返すほど味が出てくる映画だと思いましたね。なので不自然なカメラ揺れや急に配置が切り替わる演出を除けば題材との相関は得てて普通に楽しめた。

→総評(問題を抱えた者同士の対峙)。
どんでん返しは微塵も感じず,むしろ無償の家族愛が身を結ぶ王道な感動映画だった..主に心に抱えたトラウマを克服し停滞する閉ざされた世界を自働的に子供たちが開拓する点では。冒険活劇な感動映画だったなと。唯一母親の幼少期による回想演出があれば物語骨格も重厚味を増し救われた感も。また全編でゾクゾクする恐怖感もやはり前半部に全て集約されてました。主に姉が階下のキッチンでお菓子の盗み食いする計画を立て階段下を見渡せば突如現れた叔母のあのキモい行動場面..や叔母が姉弟が仕込む仕掛けカメラに気付き片手には包丁を持ち..のくだり等。あと1番肩透かしをクラった場面は叔母がオーブン内部を姉に掃除させる場面..完璧な茶番劇だ..ベタな騙し討ちを受けました。あとコレは憶測で(劇中では描かれてませんが)祖父母側にも仮にもしかすれば何らかの癒えない傷を負い事情を抱え込んだ状態で生活を..という作品背景を置けば俄然視野が広まる解釈が豊富な映画だとも取れましたね。本作は主に主題を何に定めるかの方向性による問題に思えた。そういう意味ではコメディかつホラー要素でシナリオを振り切った事は失敗だった気がする。コメディ要素の叔母が半ケツを出す場面やかくれんぼ最中に半狂乱になり暴れ出す場面など度を超してる点で。ただ,本作を観たのがだいぶ前で記憶が抜け落ちてる部分も。あと監督の代表作『シックス・センス(1999年)』も比較で再鑑したくなりましたね。次回作の新作もスリラー映画で2本準備されてるとかで。まとめれば..クライマックスの事態が急変する祖父母との対峙部分を除いても前半部の奇怪なパラノイア性で十分楽しめる持続性が染み込んでるため作品の結末や祖父母の真な正体よりもジワジワ忍び寄る恐怖感や嫌な不穏性を楽しむ点では抜群です。是非7年振りの最新作をお勧めします。
JIZE

JIZE