みちみつる

シン・エヴァンゲリオン劇場版のみちみつるのネタバレレビュー・内容・結末

4.8

このレビューはネタバレを含みます

正直、自分はあまり深く考察せずにシリーズを楽しんでいたライトなファンだけど、それでも感極まって泣いた。
にわかなりに、いちアニメ好きとして学生時代から観続けてきた作品がついに、本当に終わってしまうんだなぁ…という喪失感、寂しさからくる涙だったと思う。

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シン・エヴァとは、「『エヴァンゲリオン』というコンテンツに関わる全ての人を、“エヴァの呪縛”から解放する話」なんだなぁ、と感じた。

「エヴァンゲリオンに関わる全ての人」とは、エヴァに登場するキャラクターはもちろん、庵野監督を始めとしたエヴァを創り上げてきたクリエイター、キャラクターに命を吹き込んできたキャスト陣、その他エヴァを支えてきたスタッフ。そしてエヴァの世界観に心惹かれ、長年囚われてきた熱狂的なファンたち…

エヴァは魅力的ではあるけど、とにかく難解で表面的なストーリーだけ追っていても理解することができない哲学的な作品。だからこそ人の心を掴んで離さない、壮大で、長年語り継がれる作品となり得た。それ故に新劇場版という新しい物語も作られ、製作陣やファンは再びエヴァに囚われることになる。それこそが“エヴァの呪縛”なのだと感じた。

旧劇場版と同じように、新劇場版も難解で考察しがいのあるストーリーにすることはいくらでもできたと思う。でもそうすると旧劇場版の二の舞で、皆がいつまでも“エヴァの呪縛”から解放されることはない。だからこそ、誰が見てもシンプルに、「これで終劇」「これでさようなら」とはっきりわかるような終わり方にしたんじゃないかなぁ…

以下、がっつりネタバレし、上記のように解釈した理由を書きます。

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旧劇場版で悲惨な最期を迎えたキャラクターたちは何らかの形でみんな救済された(亡くなったキャラもいたけど、旧劇場版のような絶望的な最期ではなく希望のある最期だった)。
シンジくんとゲンドウは初めて真正面から対話し、理解し合い、和解することができた。
シンジくんとの対話を通して、レイ、アスカ、カヲルくんたちの魂も救済された。
シンジくんはユイに命を救われ、ゲンドウとユイも再会することができた。
全てのエヴァンゲリオンが槍に貫かれ、エヴァに搭載された魂(?)も浄化された
(シンジくんの「さようなら、すべてのエヴァンゲリオン」という台詞で感極まって泣いた…)。

そしてシンジくんは…最後、マリに救済される
(ここはシン・エヴァで1番衝撃だった!)
絵コンテのままの画面、着色前のアニメーションが流れ、徐々に「これが、アニメ(虚構)である」ことを示唆してくる。

そして…
場面は変わり、駅のホームで誰かを待つシンジくん。
なんと“エヴァの呪縛”から解放され、大人に成長した姿に!!(声変わりもしてる…!!)
その後、背後から現れたのは…やはりレイでも、アスカでもなく、大人の姿をしたマリだった。

他愛ない会話を交わしたあと2人は「さぁ、行こうか」と走り出し、向かった先は…

なんと実写。現実世界だった。

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まさかマリが新劇場版の正規ヒロインだったとは、予想だにしてなかった…
まぁ母親のクローンである綾波では無いだろうし、アスカも途中でケンスケとくっついたから、おや…?とは思ったんだけど…

話を戻すと、シンジくんやマリが“大人の姿になる”=“エヴァの呪縛から解放”されて、現実世界へと走り出す、というのがこの「シン・エヴァンゲリオン」のテーマを端的に表しているなぁ、と感じた。


エヴァンゲリオンの登場人物たちは皆、救済された。
これを観ている君たちも“エヴァの呪縛”から解放する。
現実世界へと戻り、自分たちの物語を紡ぎなさい…

と、文才の無い私が書くと陳腐な言い方になってしまうが、そんなメッセージだと受け取った。
あくまで私の解釈なので、本当のところはどうかわからないけど…

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率直な感想を述べると、1つの映画作品としては凄く良い出来、とは言い難い。
話はどこかで観たような展開ばかりだし、これは本当にエヴァなのか?と疑いたくなるような陳腐な台詞やお涙頂戴シーンまである。
でも今回はその“わかりやすさ”をあえて意識して創っているような気がする。

すべてのキャラクターを救済し、シリーズすべての収束へと向かうラストは、陳腐でありきたりではあるかもしれない。でもそれ以上に感動的で、エヴァンゲリオンという壮大な作品が歩んできた歴史の長さを感じられる素晴らしい終幕だった。

そういう意味ではこれ以上ない完璧な結末だったと思う(熱狂的ファンからすると賛否両論あるのかもしれないけど…)。

私は、あれこれと深く考察してこなかったライトなファンではあるけど、高校生のときに初めてエヴァを観てから10年以上、エヴァンゲリオンという作品に慣れ親しんできた。なので私にとってもエヴァは青春の思い出のひとつだし思い入れのある作品だ。
そのビッグコンテンツが今度こそ本当に終わってしまうんだなぁ…と思うと、感慨深いと同時に寂しい。


だから、もうしばらくは“エヴァの呪縛”に囚われたままでいたい、と思ってしまった。