やぎです

シン・エヴァンゲリオン劇場版のやぎですのレビュー・感想・評価

4.3
新劇場版エヴァンゲリオン最終劇。
おもしろかった。
2時間を超える大長編ではありながら見応えがあったのは、単なるエンタメとしてのアニメーションではなく、監督・庵野秀明が四半世紀かけてたどり着いた表現の結集のように感じたからかもしれない。

エヴァはゲンドウがユイに会うという純愛の世界系でありながら、過去シリーズでゲンドウが語るシーンは多くなかった。今作にはそれがあった。
後半の自白シーンは、え、これ現代美術館で流れていても何ら違和感がないのだが、と思いながらありのまま表現される様子に圧倒されて観た。それほどあまりに利己的で個人的で内向的な深層心理を断続的に描写していた。
このエンタメと相反するアート的な表現を、長大なエンディングに流れる多くの関係各社を巻き込み、莫大な資金を投入して、四半世紀かけて制作してきたことに驚きを禁じ得ないし、そんな表現を成し得た監督やアーティストがこの世にいるのかどうか、そもそも詳しくないけどすぐに思い浮かばない。キューブリックくらいじゃないのかな。

NHKプロフェッショナルによると、絵コンテすら描かず、あらゆる新しい手法に挑戦しながら制作したようで、エヴァを良い形で終わらせたいという思いももちろんあるのだろうけど、とにかくアニメーションの表現の限界を突破しようという気概を感じられた。
また、回復途上の町並みや畑仕事やご近所付き合いや生命の誕生は、これまでのエヴァシリーズでは意図的に避けているのか、必要とされていなかった生活感のある有機的な場面だけど、今作では人間生活を送る上で避けられないこの原始的な”幸福感”がありありと表現されていて、世の期待や理想が膨張したこの作品に、本当に終止符を打ちこまれた気がする。
そして次世代のアニメーションへバトンを託す釘まで刺された。

音楽もものすごく良いのだけど語り尽くせないので書くのはやめる。
エヴァは考察を読んだり見たりすることで何回でも味わえるところも現代らしくて楽しいので、しばらくはそれらをしっかり楽しもうと思います。
やぎです

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