このレビューはネタバレを含みます
夜ももう遅いのだろう。主人公のアンナを乗せた列車は人の乗り降りがほとんど無くなった駅のホームに入って行き、やがてまた走り出す。それが何度か繰り返される。アンナが車窓から見ているであろうその風景は限りなく寂しい。アンナは、長旅には不向きな、せいぜい二泊三日分ほどの荷物しか入らないバッグを手にぶら提げて移動を繰り返す。彼女は服を着替えたりしないし、肌着さえも身につけていないかもしれない。だからバッグの中には着替えなど入っておらず、”寂しさ”を詰め込んで持ち歩いているのかもしれない。そして、その寂しさを誰かに預けたくて、人肌を求めたり、問わず語りに耳を傾けたりする。映画は、アンナが家に帰り留守電に溜まったメッセージを聞くところで終わる。彼女はここでも人の話を一方的に聞くだけだ。