えいがドゥロヴァウ

ムーン・ウォーカーズのえいがドゥロヴァウのレビュー・感想・評価

ムーン・ウォーカーズ(2015年製作の映画)
3.3
冒頭、キューブリックのエージェントのオフィスに『時計じかけのオレンジ』っぽいテーブルがあったのだけれど
それが悪趣味で(色々言いたいけど、とりあえず色塗ったらダメよ)
キューブリック絡みのネタに関しては期待できなくなりました
そしてこの映画の目当てがなくなってしまいました…
本作の舞台がアポロ11号打ち上げの1969年で
『時計じかけのオレンジ』が1972年
公開より前にあの悪趣味テーブルが存在していたという設定は
嫌です
エージェントのチャラさも嫌
あんなのがキューブリックのエージェントなのは嫌
…というか、先日観たジョン・マルコヴィッチ主演の『アイ・アム・キューブリック』でも感じましたが
僕のなかでキューブリックが神格化されてしまっているのだなぁと改めて実感しました
崇拝は盲目を招きますね

「ツァラトゥストラはかく語りき」は使いたくなるのも分かるのですが
余程のシーンでないと『2001年〜』の荘厳なオープニングに比べたら見劣りしてしまうので
相応の覚悟が必要でしょうね

辣腕のCIAエージェント役を演じるロン・パールマンがすっかり爺さんになっていて
むちゃくちゃタフで強いのだけどあまり生気がない
ベトナム戦争のPTSDで自分が殺したベトコンの幻影たちに苦しめられています
(ロン・パールマンは心優しい怪物というイメージがしっくりくるんですね)
ルパート・グリントは『ハリー・ポッター』シリーズを観たことがないのもありまったく興味なし
ドラッグカルチャー全開の退廃的な屋敷の作り込みや幻覚描写もイマイチ振り切っておらずと
第一印象での嫌悪を取り返せなかった感があります

ただ、展開は小気味よく進んでいきますし
劇中に登場する映画"Bounce"(跳ねる)は似非アートのネタとして秀逸です(お腹の肉の揺れが良いですねぇ)
エリカ・セントというベルギー女優の蠱惑的な瞳(若干ラリっている)とノーパンのお尻が美しい
ショットガンで頭を吹っ飛ばす場面も良い塩梅でした
また、終盤にすべての勢力が一堂に会してワチャワチャする展開はガイ・リッチー的でワクワクします
キューブリック好きは別に観なくていいと思いますが
70年代の音楽や風俗が好きな人はライトな感覚で楽しめるのではないでしょうか