グラッデン

団地のグラッデンのレビュー・感想・評価

団地(2015年製作の映画)
4.0
経営していた薬局を廃業し、古びた団地に引っ越してきた夫婦に起こった出来事を中心に、団地という空間の中で繰り広げられる妄想と少し不思議な現象を描いた作品。

藤山直美さんのスケジュールに空きが生まれたことが契機となった作品とのこと。主演の藤山さんはもちろん、岸部一徳さんや石橋蓮司さんをはじめとする阪本監督の出演経験のある役者さんのキャラ・演技の持ち味が作品の中にキッチリと落とし込まれていたと思いますし、アドリブも含めたキャストの方々の機転や妙技もあったのではないかと感じさせられました。
一方、数少ない若手キャストとして名を連ねた狂言和泉流の小笠原さんは、飛び道具のような、彼にしか出来ない独特の表現で異彩を放っていたのも強烈なインパクトを感じました。彼の歌う『ガッチャマン』と藤山さんの歌った『時代』はしばらく耳から離れませんでした(汗)

本作は、タイトル通り、団地を舞台にしております。団地を舞台にした作品といえば、先般鑑賞した是枝裕和監督の『海よりもまだ深く』もありましたが、同作品が日本の戦後文化におけるレガシー的な側面を強く感じましたが、本作『団地』は団地が持つ特徴や現在進行形の姿を描いている印象を受けました。

特に藤山さんが演じる主人公の主婦が作中で述べておりましたが、団地=「噂のコインロッカー」とする表現が印象に残りました。ロッカー(部屋)の内部は利用者しかわからない、だから他の人は限られた情報の中で想像するしかない。そんな真偽の定かではない噂が飛び交う、団地という舞台設定を生かした展開が随所に見られました。しかしながら、そこを陰湿に描くのではなく、笑いたくなるような滑稽さを伴走させていたのは良かったです。見ていた劇場でも、終始笑い声が聞こえてきました。

どこか見覚えのある団地の風景から、終盤はかなりぶっ飛んだ内容になっておりますが、ジェットコースターというよりはローラーコースターくらいのライド感が非常にしっくりきました。