豚肉丸

Crystal Fairy & the Magical Cactus and 2012の豚肉丸のレビュー・感想・評価

4.3
チリに旅行中の空気の読めない青年はある日パーティで知り合った「クリスタル・フェアリー」と名乗る不思議なヒッピーの女性と連絡先を交換する。翌日、少年とその仲間たちは幻覚作用があるとされるサボテンを探す旅に出るが、あることから部外者であるヒッピー女性が加わることになり、地獄のような空気感の旅が始まる...というお話

『Rotting in the Sun』のセバスチャン・シルバ監督の代表作。
知らず知らずのうちに失言を繰り返し場を凍らしてしまう主人公の描写がかなりリアルすぎてただでさえ嫌な地獄のような空気感が漂っているのに、さらにそこから完全な部外者である「クリスタル・フェアリー」が入ってくることによって空気はさらに最悪なことになってしまう。そんな感じで中盤まで続くのでかなり心臓に悪いのだが、物語の主題である「幻覚作用があるサボテン」が出現してからは物語が動き始めてなかなか面白かった。その印象的なアイテムが見事に「気まずい空気感の旅」の物語を動かす原動力として活用されており、ドラッグとコミュニケーションを媒介とした新たな関係性の構築を提案する流れに移るのが見事。

手持ちカメラを用いたドキュメンタリータッチな作風がより一層気まずい空気感を演出させている。演出過多ではあるがドグマ95的な味わいを醸し出しつつ、キャラクターにカメラが寄り添う形にもなっていて良い。どんなに厄介な性格を抱えていたとしても(2012年に地球が滅ぶマヤの予言を信じているスピリチュアルなヒッピーだとしても)カメラは親身に寄り添い続ける。

特に尖った面白い部分は感じられず、物語も単純ではあったものの、王道的だけどかなり捻りが加えられていてなかなか面白かった!
豚肉丸

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