櫻イミト

私は好奇心の強い女 イエロー篇の櫻イミトのレビュー・感想・評価

3.5
映画史にポルノ解禁をもたらした革命的なアヴァンギャルド作。”政治とセックスの季節”の若い女性をポップに描く。監督はベルイマンに師事したヴィルゴット・ショーマン。主演は「秋のソナタ」(1978)で寝たきりの娘を演ずるレナ・ニーマン。※翌年の「私は好奇心の強い女 (ブルー篇)」は本作の続編。

自由奔放な演劇学生のレナ・ニーマン(22歳)は、愛人関係のヴィルゴット・シェーマン監督(42歳)の社会派映画に主演する。スウェーデンの社会階級、徴兵制、男女の不平等、非暴力、スペイン内戦と、様々な街頭インタビュー撮影を重ねていくレナ。部屋は社会問題や宗教関係の切り抜き、性交渉を持った23人の男たちのファイルなどで埋め尽くされている。複数の男たちとセックスを重ねながら社会問題の考察を続けていくが。。。

60年代末期の空気が満ちあふれていてとても楽しめた。ショーマン監督は6歳年上の師匠ベルイマンの殻を破ることを念頭に制作したと語っている。手法的にはゴダール監督の影響が見受けられるが、ヒロインのセクシュアリティへの肉迫という点では遥かに時代の先を進んでいる。

虚実ないまぜの構成も表現として楽しめた。ポップなフアッションの若い女性が社会問題をインタビューする絵面は、寺山修司の映画作品に影響を与えていると思われる。一方、上映禁止騒動を巻き起こしたセックス描写は、大胆ではあるが色気のあるものではなく、若松プロによるピンク映画枠のアヴァンギャルド映画に近い印象(若松監督の”ピンク映画”「壁の中の秘事」(1965)がベルリン映画祭に出品された”国辱映画事件”は本作の2年前)。

スウェーデン映画は「春の悶え」(1951)でも全裸シーンがスキャンダラスな話題になった。加えて本作の上映禁止騒動が起こり”セックス先進国スウェーデン”のイメージが決定づけられた。

※ショーマン監督はベルイマンに脚本を習い、「冬の光」(1962)のメイキング映画「Ingmar Bergman Makes a Movie」(1963)が初監督作となった。
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