大多数の鑑賞者は、音楽や小説よりもさらに、映画製作者のコードを知らない。だから例えば文学研究をしている僕が映画にケチをつけるのはいつも、脚本の粗に対してである。
序盤の伏線が回収されていない、こういったシーンが必要であったはずだ、ああいったシーンは不必要だったのに、等々。
その観点から切ることのできない「隙」を本作は持っていた。たてえばオープンエンディングめいたラスト、本来はもっと撮るべきシーン、言うべき台詞があり、エンドロールを流すべきだったと思う。
しかし、あの隙がもたらす最後に頬を流れる風に、一体誰が文句を言えるのか?