ドック隊長

ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐのドック隊長のレビュー・感想・評価

4.3
この映画は、ある一人のたぐいまれなる才能を持った作家と、一人の編集者との軌跡を描いた作品である。

原題である「genius」は、一見作家の事を指すのかとも思うが、あるいはその「作品」を世に送り出す編集者の熱意やセンスといった才能も、暗示しているのかもしれない。

有名衣装デザイナーをパトロンに持つ、作家のトマス・ウルフは、文才にあふれる情熱家だが、作品に対する思い入れが膨らみすぎて、とても世に出せない分量の「超長編作品」を書いていた。
出版社に持ち込まれた彼の作品に目を通し、才能を見抜いたベテラン編集者のパーキンスは、これを本にして出版するために、二人三脚で無駄な部分を削ぎ落とす作業を始めることに…。

ときには励まし、ときには怒り、共に喜んだり、対立したりしながら、二人は先の見えない出版までの道のりを乗り越えていく。

普段の会話さえ詩のような言葉で語るトムと、見るからにカタブツのパーキンス。そして、二人を取り巻く家族たち。
それぞれの気持ちや、「(労働者階級の)彼らを描いているのに、彼らには本を読む余裕などない」という時代背景も交錯しつつ、ベストセラーとなる作品を生み出した二人の交流が、密度の濃い芝居で引き込まれる。

あたたかく切ない余韻の残る、いい作品だった。
ドック隊長

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