Yoshishun

クリーピー 偽りの隣人のYoshishunのレビュー・感想・評価

クリーピー 偽りの隣人(2016年製作の映画)
3.5
“本当にクリーピー(気味が悪い)なのは”

映画秘宝や毎日映画コンクール等国内外で高評価を得たサイコスリラー。黒沢清監督らしい暗黒映画ながら、サブタイトルや宣伝が一種のネタバレなのにミステリーが主軸ではなかったとは。

最近、国内では近所付き合いが減っているらしく、かくいう私もマンションに引越してからは隣人と関わる機会もなく、また隣人も積極的に関わりに来るという事もない。家族以外では1番近くにいる存在なのに、関わらなければ何も知らないのである。そんな隣人にとんでもないサイコパスが住んでいたというのが本作である。

香川照之演じる西野は、ロクに挨拶を返さないばかりか、西島秀俊演じる主人公・高倉らに詮索されることを嫌う。徹底して憎らしい奴と思えば、突然愛想よくなり、図々しくも高倉家に取り込んでいく。明らかに不審者なのに自然と溶け込んでいく気味の悪さ、これこそ黒沢清監督の真骨頂といえるだろう。

そして西野のみがクリーピーな存在かと思えば、高倉こそ真のサイコパスだったことがわかる。元刑事の大学教授で未解決事件の捜査に乗り出すものの、無情にも被害者一家の娘にあれこれ聞き出す。更には家庭でも妻とのやり取りに乏しく、「あっ、そう」や「ふーん」と一貫して興味のないものは興味を示さない。得体の知れない気味の悪さは最初から高倉にもあったのだ。

全編に漂う気味の悪さは一級ものだったが、ミステリーとしての面白さは皆無で、終盤の地下での一幕でセットの安っぽさも相まって面白さは急減速してしまう。香川照之のサイコキャラだけで2時間はさすがにもたなかったか。
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