ボブおじさん

ディストラクション・ベイビーズのボブおじさんのレビュー・感想・評価

3.6
ドラマ「ガンニバル」で主人公の警察官を演じた柳楽優弥。その内面に隠し持つ狂気と暴力性のルーツをこの映画に感じ取ることができる。

是枝裕和監督の「誰も知らない」で、カンヌ国際映画祭の男優賞を当時最年少の14歳で受賞した柳楽が、あっと驚く意外な変貌ぶりを披露した映画でもある。

日々ひたすら路上でケンカを売りまくる暴力に取り憑かれた虚無な若者をほとんどセリフも無く演じている。若くして栄誉を掴んだ後、自分の演技の方向性に迷いを感じていた柳楽が、再び覚醒するきっかけとなった作品ではなかっただろうか?

舞台となった愛媛県松山市は、以前短い間だが住んでいたこともあり、大街道のアーケードなどロケ地に馴染みの場所が多く登場していたのが懐かしい。

柳楽優弥が再ブレイクするきっかけになった映画であると同時に、菅田将暉、小松菜奈、池松壮亮、村上虹郎、北村匠海ら、その後の日本映画界を支えることとなる若手俳優たちの演技合戦も見ることができる。

各自の持ち味と存在感を互いに競い合い、歪ではあるが刺激的でユニークな青春群像劇がここに誕生した。

ちなみに片仮名のディストラクションは、『Distraction(気晴らし、動揺)』と『Destruction(破壊)』のどちらとも取ることができ、未熟な若者たちのことを上手く表していると思う。