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ヒトラーの忘れものの白のレビュー・感想・評価

ヒトラーの忘れもの(2015年製作の映画)
4.5
”罪の転嫁”と”赦し”をテーマにしている。
擦り付けられた責任に未熟な心と体は悲鳴を上げるが、兵士とされることで彼らは社会的負の側面に組み込まれざるを得ずその声は掻き消される。こうしてこの映画は戦争の犠牲のヴァリエーションを描く。
身動きの取れない組織的規律は理性で押し殺すべき人情における葛藤を生む。その描出は大胆にも思えてしまうが、結果として地雷の一貫した緊張感とドラマの起伏にはなくてはならない。
エルンストと少女が印象的だった。ダメだと言われながら危険の渦中に足を踏み入れてしまう厄介さ·無力さにそれでも手を差し伸ばしてあげるこの瞬間は、倫理が横断し構造が複雑化した現代社会における境界の消失を意味し、希望に満ちている。しかしその後少年自らによる選択はそのような生の尊重や人間性の損失を示唆し、展開の衝撃以上に嘆き深い余韻を遺す。
無垢や未来の象徴として子供を登場させることでテーマが与えるメッセージ性は強化され今尚我々が持つべき人間性を呈示する。そしてそれは移民問題に揺れる現代欧州への提案でもあるのだろう。
許すことと許されないことの決断は映画の外で、今も我々に試されている。しかしこの決断を下すのはシステムではない。何時だって人間なのだ。
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