とっくん

レディ・プレイヤー1のとっくんのレビュー・感想・評価

レディ・プレイヤー1(2018年製作の映画)
5.0
「歴史的大作」だと思います。


この作品はこれまでの映像娯楽コンテンツの「集大成」でありながら、VRを題材とした「タイムリー」な作品であり、また「未来への課題を提示した」作品であると感じました。

「集大成」という点については、言うまでもなく、過去の作品に対するオマージュがこの作品には多分に含まれています。しかし単に過去作品を登場させるだけではなく、その描き方に特徴があると感じました。オマージュの対象とされている個々の作品のファンが、その作品のどのような点におもしろさを感じるのか、ということを(監督は)把握した上で過去作品を登場させたのではないかと思いました。このことから、スティーブンスピルバーグという人物が、どれほど映画監督としての名声を得ようとも、あらゆる作品を研究しようとする謙虚な姿勢を保っていると感じました。また、消費者として純粋に娯楽作品を楽しむ視点も常に持ち続けている人物であると思いました。これらの姿勢が彼を巨匠たらしめている所以ではないでしょうか。

次に「タイムリー」という点に関してですが、その時々の先端技術を題材とした作品は、(商業的に成功すれば)歴史に残すべき作品だと思います。今回はVRが取り上げられました。先端技術を語ることで現代人には同時代を生きる人類としての一体感を与えてくれます。また、未来でこの作品を語るにあたって、2018年の先端技術が取り上げられることによって、2018年に生きていた人々の価値観を知るきっかけにもなるのではないでしょうか。このような視点で考えると、この作品は映画史(文化史)的に大きな役割を果たしているものではないかと思います。

三つ目の「未来への課題」ですが、これはこの作品に込められたメッセージに関することです。この作品では明確に「現実こそが大切なものである」というメッセージを提示しています。しかし、このメッセージの是非は現時点では判断不能です。ぶっちゃけ「これからの時代は仮想現実だぜ!」みたいな哲学の元に主人公達が行動していたとしても、「Oasis」はクリアできたゲームだと思います。それでもあえて「現実が重要だ」というメッセージを残したことに意義があると思います。これによって「2018年当時の人々は仮想現実よりも現実世界を重要視していた」という価値観を未来に示せるのです。この価値観が未来でどう評価されるのか、現代の一般人には知る由もありませんが、2018年当時の人々の価値観をある程度代表している作品として『レディ プレイヤーワン』は認められるものではないかと思いました。
ちなみにこれは私の感覚ですが、やはり「現実が大事」と言う方が現代の娯楽作品には相応しいメッセージではないかと感じます。そういう意味で『レディ プレイヤーワン』は現代の価値観を代表すると言っても差支えない作品ではないかと思います。

メッセージに関してもう一つ言及すると、製作者が作品に対してメッセージを明確に持たせるというのは、何かを生産する者として根本的に必要な気持ちです。メッセージの内容がどうであるかよりも、メッセージを明確に定義していることを評価すべきでしょう。仮に真逆の内容がこの作品で伝えられていたとしても、私は『レディ プレイヤーワン』の評価(点数)を変えません。

以上述べたように当作品は間違いなく大作だと思うのですが、それとは対照的にストーリーは単純明快そのものです。ただしこれは欠点ではなく、膨大な情報量に対してむしろ長所として引き立っているものかと思います。あらゆる情報が猛スピード流れていく中、王道展開がどっしりと構えているために物語のバランスが保たれています。情報処理に追いつかなかったとしても、ストーリーはすっと頭に入ってきて、純粋に映像を見ているだけで楽しめる、娯楽映画としての基本もしっかり抑えている作品です。

2018年5月6日 この作品に出会えたことに感謝致します。
とっくん

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