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アルタード・ステーツ/未知への挑戦のnoteのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

生理学者エディは、人類の意識の奥底には生命誕生から連綿と続く進化の歴史が眠っているにちがいない、意識の底深くを探検すれば生命の神秘が解けるかもしれないという自説を証明するため、自らの肉体と精神を実験に捧げた。”先祖の花”と呼ばれるメキシコ・インディアンから手に入れた秘薬は強力な幻覚症状を引き起こすが…。

マッドサイエンティストの奇行を描いた一風変わったSF映画。
ケン・ラッセル監督によるシュールなイマジネーション映像が炸裂する怪作。

主人公が同僚とともにメキシコの呪術師のもとを訪れ、幻覚キノコを食べてみると、意識の状態を変化して、まるで神の啓示のような別世界が見えた。
客観的に見れば「麻薬でラリっている」訳だが、「なぜ、こんなモノが見えるのか?人間の意識の中には原始から続く何かが眠っている!」と研究者の魂に火がついてしまう。

エディは結婚を機に、一度は危ない研究から距離を置くが、やっぱり意識の謎を解明したいと、ドラッグを使った状態で瞑想タンクに入浴する。

すると幻覚作用は意識を原始の状態に戻すだけでなく、やがて現実の肉体も逆進化を施す。
エディは原始人に変身し、大学構内を逃げ回って大騒ぎとなるが、薬の効果が切れると現代人に戻る。
さらに研究を進めると、マシンが暴走?して、実験室で主人公の意識の奥底が具現化し、胎児?のように肉体が変化、さらに時空の歪み?のようなモノまで出現する。
このクライマックスの映像イメージの言語化は大変難しいので、見ていただくしかない。

「2001年宇宙の旅」のラストにおける進化のイメージを一個人内で逆行させたオマージュなのかもしれないが、このようなテーマに取り組んだ作品がいまだに現れないのも、この作品以上の映像化が困難なためと思われる。

肉体や物質の変化に科学的な根拠は皆無なのだが、脳内意識の奥底や細胞や遺伝子に眠る古代からの情報と神秘に切り込んだ視点はいまだ斬新。

この物語に実在のモデルがいるというのも驚きだ。

ヒッピー・カルチャーが残る70年代の空気と主人公の真剣な知的探究心が、現実を超越したSFとして成立している稀有な作品だと思う。
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