OASIS

アルタード・ステーツ/未知への挑戦のOASISのネタバレレビュー・内容・結末

3.7

このレビューはネタバレを含みます

心理学者が精神分裂病患者の治療の為自ら実験台となって危険なテストを繰り返すという話。
監督は「tommy」等のケン・ラッセル。

「進化したと思ったら退化していた」
何を言っているのかわからねーと思うがおれも何をされたのかわからなかった...。
頭がどうにかなりそうだった...。
催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなりもんじゃあ断じてねえ もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ...。
そんな映画だった。

心理学者のジェサップは生命の根源が遥か原始の時代にあると考え、水槽での実験を繰り返し真理を探ろうとしていた。
癌で亡くなった父親、そしてキリストの幻影。
信仰を無くしたはずのジェサップの脳内を駆け巡るのは宗教的な思想。
精神分裂病患者の頭の中にも同じようなものが流れているという考えは間違ったものとは思えず、人類の起源=キリスト誕生となるのも理解は出来る。

山奥に住む部族から幻覚作用の強いキノコを授かったジェサップ達は、水槽と併用してさらなる高みを目指そうとする。
「無と無の間」いわゆる虚無、虚空。
意識は何処にあるのか?
無の先にあるものとは?というような科学的で哲学的な難解なテーマにシフトして行くのかと思うも、やっている事はキノコを食べてトリップしているだけという危ない行為だったり。
蛇に絡まれ、オオトカゲが妻の姿に変わり、砂になって消えて行く。
言葉で説明すると訳が分からない、トリップしたとしか説明出来ないイメージが連続する。

実験を何度も繰り返す内、発作が起きたり体の機能が退化したりと身体的な変化が現れ始める。
原始の時代にある人間の根源=原始人という事で、根元を探る内に本当に原始人になってしまうジェサップ。
ここまで来ると科学的なテーマは薄れていつしか「北京原人」風に。
身体も変化し、脳も退化してしまった結果それは進化と言えるのだろうか?という疑問も。
だがジェサップは「今までに感じた事の無い充足感があった」とご満悦な様子で。
それってただ単に服を脱ぎ捨てて裸になったからじゃないのかという気にもなって来たりした。

そんな事があったにも関わらず、懲りずにまた実験をしようとするジェサップ。
そのある種の狂気を孕んだ興味はいつしか周囲をも巻き込んで行く。
時空を超えて、空間を超えて辿り着いた「人類の根元は愛である」という真理。
言われなくても初めから分かっているような気もするが、そんな単純な事さえ見失ってしまうほど科学とは魅力的なものなのだろうかと興味をそそられる作品だった。
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