りょう

ベイビー・ドライバーのりょうのレビュー・感想・評価

ベイビー・ドライバー(2017年製作の映画)
3.8
 おそらく4年ぶりに観ました。冒頭にThe Jon Spencer Blues Explosionの1995年の「Bellbottoms」が流れます。どんな楽曲か知っているだけに、イントロで「なんで?」と思いましたが、逃走シーンの展開で「ここのパートを使うのか」と納得しました。その他のシーンでも、派手な銃撃戦の銃声とリズムがシンクロするあたりは、ほとんどミュージカルの演出です。エンジン音を含めて爆音上映が最適でしょうが、それなりの音量を確保できれば、自宅の音響システムでも迫力を体感できます。
 物語そのものはありきたりですが、主要な登場人物のキャラクターがしっかり描かれているので、魅力的な作品に仕上がっています。ただ、エンディングは裁判の判決シーンまでにして欲しかったです。2人の未来はすでに暗示されていたからです。
 個人的には、幼少期の両親の不仲と交通事故による死別がトラウマとなっているというベイビーの設定からすると、他者との距離感に悩むような複雑な人格にして欲しかったです。デボラとの人間関係の形成が円滑すぎて拍子抜けしました。

 この作品そのものを批判するつもりはありませんが、重要なアイテムであったイヤホンの描写に違和感がありました。
 あえて言うまでもありませんが、自動車の運転中のイヤホンはとても危険です。最近はノイズキャンセリング機能などもあり、周囲の音は視力を補うための重要な情報なので、どんなに超人的な運転技術があっても致命的です。
 また、土井裕泰監督の「花束みたいな恋をした」でしつこく指摘されていましたが、2人でイヤホンの片方ずつを聴くことは、音楽制作の関係者に大変失礼であるばかりでなく、そもそも楽曲の半分しか聴けていません。30年以上前にThe Rolling Stonesを聴くようになって気付きました。左右でまったく違うギター演奏が聴こえてくるからです。ベイビーはマニア級の音楽ファンだと思うので、あの行為は許容できなかったはずです。

 ちなみに、この作品は、2017年の#MeToo運動でハリウッドを追放されたケビン・スペイシーの最後の出演でしょうか。名優だっただけに非常に残念ですが、真相が判明しないまま5年も経過しているので、かなりモヤモヤです。
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