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バービーのloomerのレビュー・感想・評価

バービー(2023年製作の映画)
4.5
これはわたしたちの話であり、わたしたちの世界の話。
この映画はずっと公開が楽しみだった。
好きな監督に好きな俳優、サントラに参加してるアーティストも好きな人ばかりと期待の役満だったところにミーム騒動が起こり期待と失望でぐちゃぐちゃになりながら劇場に向かった。

軽い緊張と共に迎えたオープニングでグレタ監督からの「今から始まるのはこういう映画だよ!」という高らかな宣言を受け取って即「最高!!」とブチ上がった。ユーモアとハイコンテクストでブン殴ってくるタイプのやつだ!見知らぬ隣の席の人も思わず声出して笑っていた。あんなの笑っちゃうよ、大好き。

バービーはわたしではないと思っていた。(定番型の)バービーは若くて美しい白人のブロンド女性。わたしは卑下とかではなく事実としてもう若くもない非白人の女性だ。残念ながら絶世の美女でもない。ピンクの服はほとんど持っていないしハイヒールも履かない。共通の話題もあまりなさそうだ。そんなバービーの映画はどうやらフェミニズムに則った内容らしいから、もしや「アメリカの白人女性の憂い」を遠巻きに眺める時間になっちゃうのかな?とも思っていた。実際、冒頭のバービーランドの最高にかわいいけれど、どうしたってメタ的に眺めざるを得ない不自然な光景に若干の居心地の悪さを感じていた。
でも、中盤から登場するとある女性もまたある意味「バービー」であるということが明らかになってから、この作品の射程にわたしも、というか女性全体、というか性別を問わず全ての人々が含まれてることが分かって泣いた。「女でいるのって本当しんどいよね」で口火を切る彼女の長台詞は思い出しても泣きそうになってしまう。女性たちも一枚岩ではない。そんな女性たちの心の鎖を解く鍵の「でもそうだよね」という愚直すぎる中身にうんうんと頷く。
(有害な)男らしさに目覚めた人が歌う曲が保守層からの人気が根強いカントリーミュージック調だったり、マチズモ映画としていくつもの名作映画やキャラクターの名前があがったり、グレタ・ガーヴィグ監督のキレキレぶりに痺れた。マンスプおじさんは万国共通なんだ辛いね。

バービーの話でもあったけれど、ケンの話であったのもとても良かった。ホワイトトラッシュではないけれど「持たざる者」のケンをライアン・ゴズリングが体当たりで演じてくれて本当に良かった。ありがとうゴズリン…。
「ならば戦争だ」からの剣や弓や銃をカラフルな玩具に持ち替えた描写が「男らしさ」フィルターで見えづらくなっていたそもそもの戦争行為の滑稽さを痛烈に皮肉っていた。男性同士の「連帯」に至る一連の流れには馬鹿馬鹿しくて笑っていたはずなのに思わずグッと来た。

マテル社も「よくこんな扱いで怒らないね!?」と思うイジられっぷりで楽しかった。ウィル・フェレルの憎めないキャラクターが秀逸。

マーゴット・ロビーは、マーゴット・ロビーの顔を見ているのにマーゴット・ロビーであるのをほぼ忘れて見ていた。あまりにもバービーだったから。すばらしい役者だな…。
あとこれは完全に個人の好みなんだけど、ケイト・マッキノンは最高!!!

場内にはショッキングピンクの服を纏ってバービー風の格好をした女性がちらほら。外国人のお客さんもちらほら。上映後、ホクホクした気持ちでトイレに向かったら、その外国人のお客さんがバービーコスの女性客に「Oh! Barbie here!」と声をかけて交流していてなんだかこっちもニコニコした。いいものを見せてもらった。
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