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バービーのhatomiのネタバレレビュー・内容・結末

バービー(2023年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

女性が輝いてるバービーの世界(フィクション)からいかに現実的にそれを実現させるか、という取り組みを映画の中でもやりつつ劇場に見に来てる我々自身もそれに試行錯誤しつつあるか、というメタ映画。

ただまあ、いかんせんビジュアルがバービーな人にそんなこと言われても(っていうツッコミに傷つく美人もいるんですよ!!)って感じだしケンだって彼女を大切にしたくてやったことで…みたいな無限のポリコレ地獄をどうポップに持っていくかで相当苦労したのでしょうね…。

ポイントとしては
男女に代表される、立場の異なる人たちの対立があったことを知らずに自己肯定感が自然と育った人間(元のバービー世界)たちは、実は男性中心社会(←と字幕出てたけどpatriarchy と言えば家父長制のことであるが)の価値観に晒されると「何も考えなくてよくてラク〜!!」って感じでそこに順応する。

余談↑そのことをサーシャ母は16世紀に天然痘で多くが犠牲になった南米の例を引き合いに出してるけど彼女自身も南米ルーツを思わせる外見+謎にスペイン語を練習する夫持ち、という。バカにしてるわけじゃないけどマイクロアグレッションと思われても仕方ないのでは…?みたいな立場の異なる人間同士の軋轢のオンパレード

が、免疫がないだけで搾取される側に立たされることの不利益を判断すればそれを解消しようとは考えられる。つまり「寝た子を起こさない戦法」で男女って平等だからねって育てることはもはや正解ではないことがここに説かれている。つまり有色人種や障害者も含めて、そこには差別の歴史や差別が発生しやすい構造があり、だからこそそれを無視してはいけないという「洗脳を解く」儀式が必要なのだと。

という感じの描写の後に誰からの支配も受けずに私らしく生きて良いですよって感じでエンドしていましたが…。

まあ個人的にはこの「洗脳を解く」ためにサーシャ母の怒りのスピーチを浴びせる作戦がなんとも言えない気分にさせられましたね。
というのも、こんなに状況が整理されてもなお、搾取されがちな側の人間が怒りを糧に努力を重ねないと「ケンダム」になっちゃうの?て感じ。
なんかもっと普通にブチギレたりすることなく生きていきたいっすね…。あっ、こういう気分がきっと男性中心社会への入り口なんですかね…?

と思ったけどこんなに怒らないほどの状況に追い詰めてきた対象に怒ることをなぜ自ら戒めて「良い人間」であろうと努めなければならないのかわからないよね。というわけでやっぱり搾取したり「良い子」を要求してくるオッサンに親切にしたりするのは無理だしやらなくていい、それが「普通」のビリケン履いた自分です。

以上のことからケンにも勝手に普通に自分なりに生きてもらおうねというエンド(普通の結論)なのは良かったと思う

・いつか怒りも湧かなくなるような、お互いに誰もが疎外し合わない世界が来るのだろうか?

この問いの答えは多分ノーでしかなく、自分が加害であれ被害であれ、無意識であれ起こり続ける立場の異なる人間同士が適切に扱われるために声を上げ続ける必要があるのだと思う。
婦人科の受診もまた、地に足つけて健康の維持に続ける必要があるのと準えてのあのラストシーンなのでしょう
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