Ruth

バービーのRuthのネタバレレビュー・内容・結末

バービー(2023年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

バービー人形で遊んだこともなければ何の思い入れもない世界だから、予告見ても最初全然興味わかなかった。むしろ、またウケ狙いの安直なラブコメをバービーで見せるだけでしょ?なんて…キラキラな画力の強さに偏見を抱いたりした。ゴリゴリに固まった偏見がいつも自由な思考を邪魔してしまう私のような輩は、この映画に出会うべくして出会ったのかもしれない!

初回は字幕版で鑑賞した。最後の方セリフが多すぎて説教じみてしまうところが勿体ないな!と思いつつ、楽曲のカッコ良さやマーゴットとライアンの可愛さにすっかり魅了されてしまった。くるくる変わる表情や声のトーンで魅力的なバービーとケンを全開に演じてた2人にまず脱帽。美し過ぎて完璧なプロポーションを持つバービーに、初めて親近感が湧いた。

「フェミニズム的映画」というキーワードがあちこちから聞こえてきてから見に行ったのだけど、私には、ケンの苦悩がそんな単純なものからきているんじゃないよね?と鑑賞後には違和感しかなく、帰ってきてからずっとそのモヤモヤについて考えていた。

バービーもケンも自己のアイデンティティクライシスに怯えている。凝り固まった社会的概念の枠組みの中で、「私はなにものなの?」ってことが分からず苦しんでいる。定番バービーってなに?定番ってなに?私を私たらしめるものってなに?ケンに至っては、「…&ケン」って!バービー有りきな存在。それぞれもがき苦しみ周囲に混乱を巻き起こしながら、最後にたどり着く選択に涙する。

アメリカでの男女の役割って、日本よりも強固にイメージが固められ求められている感じがしてた。精神的にも肉体的にもマッチョでいることを求められ、いついかなるときにも強さむき出しに家族を守らなければならないアメリカの男性…生き辛いだろうな、とずっと思ってた。それを見事ケンで見せてくれた「バービー」!グレタの脚本の素晴らしさに唸る。いつからどうして植え付けられた男女の固定概念だろ… 男女別なく皆その枠組みに苦しんでいる。

ケンが、どうしたらいいか分からなくなり、わぁーーーっと泣き崩れるところが大好き!これを書きながらも涙で視界が曇るほど感激する。そこで大丈夫!と言い切るケンのセリフも素晴らし過ぎて泣く。寄り添うバービー。あそこがクライマックスで、切り取りたくなるような名シーンなだけに、最後のオチは蛇足なような気がして-0.2だけれど…グレタとマーゴットが伝えたかったメッセージは、わざわざ言語化&映像化したラストシーンとして見せてくれたその意義も心意気は買っている!

マーゴット・ロビーも自身のブランドイメージ(金髪白人)に苦しんだ経験があるんだろう、と思うと、サーシャに強い言葉で非難されるシーンの表情が切なく美しい。欧米的社会的枠組みや文化の中でヒットする映画であることには違いないが、日本でもたくさんの人に見てもらいたい!と心から願う。
Ruth

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