MasahideYoshida

バービーのMasahideYoshidaのレビュー・感想・評価

バービー(2023年製作の映画)
4.6
2023年公開
監督 : グレタ・カーヴィグ
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誰もが知っている「お人形」が、ある日自分が”完璧ではなくなってきているのではないか”と感じてしまったことから巻き起こる、アイデンティティのお話。

自分らしさと、周囲や社会とそれを接続することの悩み苦しみと、それを全て抱きしめてそれでも前を向いていこうっていう、女性も男性もエンパワメントされる物語。

すごい映画でした。男性性と女性性という構造のみならず、死生観と老い、社会風刺、争いの構造、エロスと他者からの承認の関係、クリエーションするものとされた存在… どれだけ面が多いんだという中身なのに、全て引き取って、カラッと揚げて笑えるお話に仕上げましたっていう天才のお仕事。グレタ・カーウィグ監督は「20センチュリー・ウーマン」も「レディバード」も「ストーリーオブマイライフ」も僕はとても好きな映画で、その根底に、人間に対しての眼差しがいい意味で「正直で、本質的で、それが故にちゃんと”斜め”である」人に違いないと思っていましたが、やっぱりそうでした。人間ってそんなに、よくできてないし、シンプルじゃないし、自己矛盾だらけだよねー、そしてだからおもろい!って思ってる人に違いないと確信しました。そんな人間の対比として「本来、未来永劫変わらず完璧であるはず」のシンボルとしてのお人形を、こんな物語にのせるとは。

「実写版バービー」っていうのは全くもってあっているんだけど、本質はそういうことじゃなくて、「バービーを題材に、人間とは何かを描いた」映画なので、「人間くささに迫る物語」が好きな人は、きっと刺さると思いました。

いやーしかし、こういう仕事をぶっ放されるのを目の当たりにして、これからの時代の「物語」のハードルがまた一段上がった感じはしました・・・ めちゃくちゃ、高度で洗練されたインテリジェンスが必要じゃないかこれは・・・と。