レトーポ試験

バービーのレトーポ試験のレビュー・感想・評価

バービー(2023年製作の映画)
4.2
性器が無いからこそ、毎日が完璧で夢のようなバービーランド。性器がないと言うことはセックスもレイプもない、出産をすることも一方的な暴力に合うこともない。故に生殖を経ての世代交代も必要ないから死がなくてもいいわけで、死を口にした瞬間周りが凍りついてしまうのがバービーランド。なのに、そこに住む皆皆が過剰なほど身体的に魅力的な男性らしさ女性らしさを備えているという違和感というか矛盾みたいなのがおもしろい(?)。死が無い世界で、良い身体を持ってる。そんなバービーが年老いた女性を見て美しいと言葉を漏らすシーンが何か良かった。変化が無いバービーランドとバービー、常に変化し、変化が求められ、対応しなければならない人間世界。最後、バービーは人間になったの(かな?)を見て、自分の生き方や身体(体つきとかメイクとか衣装とか)への決定権て、当たり前に持ってるけどやっぱりちゃんと大切にしなきゃな〜と思った。

少し前に見たNHKの『大奥』的な男女逆転の世界から、ケン(男性)が人間世界に飛び出してエンパワメントされる。それまでバービーの付属だったケンが現代の男社会、家父長制を知って持ち帰り、革命を起こすっていう、もろ現実世界と重なる出来事にゾクッとしつつも、権力の難しさとか男性性の悩みにぶつかって素の自分や自分にしか無い「らしさ」を探して自分でいることを幸せだと思えるように頑張ろうってなるのが良かった。バービーランドの中で女性にとっての付属"群"だったケンには(自分でも気づけない)寂しや傷つきがあって当然だったのかなと。そして個人的に重要だと思う隠れキャラのアラン。男性性から離脱したアランにはどこか親近感があって愛おしい。女性コミュニティに馴染めて応援できる。あ〜男女に関わらずそうゆう人いるよな〜と、思った。
ここまで書いた時に割と「男、女」へのスポットに限定された映画だな〜と思って、男性の生きづらさ女性の生きづらさを明確的確に描いてはいるものの、現実世界はもっと色んな性の生きづらさがあって、でもそこに言及し始めたらキリがないから切ったのかな〜と思ったりもした。

もっとエンタメエンタメしてると思いきや(世界観もサントラもオマージュもスーパーエンタメではあったけど)、想像以上に社会的というか政治的というか、その辺のものがガンガン前に出てた。ほぼほぼ隠れてない。からこそ純粋に楽しい娯楽映画として100%楽しめたわけではないけど、見方変えてお土産増やして帰ろうと思った。

『2001年宇宙の旅』で始まりそこからのオープニングが正直ピークで最高!って感じ。『マトリックス』のシーンはめちゃ笑った!

作品の外側でいろいろあって、それは外側でちゃんと処理すべきもの。これ程良くできた映画を前にして、外側の事情だけで批判、視聴回避してる人をみるとあまりに短絡的で間抜けだな〜と思ってしまうすいません。


触れ忘れたどサントラ最高〜〜!!
1番最初のPinkって曲めっちゃ耳に残るし、そっからのDua Lipaで爆上がり。サムスミスもハイムもラロイもにわかだし普段そんなに聴くアーティストでは無いけど、まじで映画のなかで違和感なく仕事してて曲単体としても超良かった。終盤、バービーのようなピンク感のないビリー・アイリッシュのバラード、唸る、やられた〜。🤦🏻‍♂️
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