レトーポ試験

パスト ライブス/再会のレトーポ試験のレビュー・感想・評価

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)
4.1
メリーゴーランドと輪廻転生
国とか人種を跨いだ関係が普通になってきているなかで、この映画の三角関係が広く受け入れられてるのかなと思ったり。でも、言語や祖国が違うことで感じる壁とか孤独感みたいなものが纏わりついて苦しいみたいな。セリフはもちろん、フレームに誰を収めてどこから撮るかみたいな演出が細かい。で、とにかくアーサーが良い人すぎて泣けた泣

画面に映らない他者視点の好き勝手な推測を緩やかなドリーインで捉える始まり。そしてその後ずっとカメラは被写体から切り離されてて、カメラは顔に寄らないし、派手な動きもない。エモーショナルを極力排除して、一歩引いてのぞいてる感じがして、3人の行く末をジャッジしているような、客観的に想像することを強いられてるような気がした!と言うか、どんな結末に物語を持って行くのかを異常なほど気にしながら観ちゃった。再会した2人が駆け落ちしちゃうのか、それを正当化するために夫のアーサーがワル系だったりするのか、みたいなそんなありきたりは嫌だなと思いつつ。結果見事に裏切られたと言うか、拍手以外何もないと言うか。

いろいろあってのラスト、抑制された演出で膨れ上がった、押し込められた感情が爆発する瞬間みたいなものを目の当たりにして驚いた。このシーンのためのこの映画のスタイルかぁと。抑制された演出へのカメラの貢献度がデカすぎる。
って言うかその前の、ノラがヘソンを近くまで送るシーン。家を出て画面左に歩く2人を正面から追跡。で、ハグして別れて画面右に向けて歩き出すノラを同じく正面から追跡。玄関でアーサーが待ってて、ハグ、の流れ。右から左に流れる時間を活かして、最後にとんでもなくドラマチックな演出、思い出しただけで泣けてくる。過去のヘソンに折り合いをつけ、未来を共にするアーサーのもとにかえる。で、ノラの爆発した感情をアーサーが全力で優しく抱きしめる、良すぎる100点。このシークエンスが100点だからもうこの映画自体が100点でいいやって感じ。
106分のタイトな時間で無駄が無さすぎるのに、満腹。本当に無駄がない。まじでない。
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