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バービーのissiのレビュー・感想・評価

バービー(2023年製作の映画)
4.2

思ったより面白かった。
サントラが豪華なことは知ってたけど
作品自体がプレイリストムービー的な作りで
前半は最高だった。
LizzoもKhalidも素晴らしい楽曲。
Billie Eilishのメインテーマもとても良かった。


カメオ出演でのデュア・リパに沸き、
ジョン・シナで笑ってしまった。

カルチャーネタの宝庫で
映画では
2001年宇宙の旅が冒頭オマージュとして登場し、
子どものおままごとの概念をぶち壊すバービーの登場を
センセーショナルに表現。
この時点で痛快作の予感満々。
しかもナレーションがヘレン・ミレン。なんて豪華なんだ。
そして
ゴッドファーザー、傲慢と偏見
がマンスプをくすぐる映画として登場する。うんうん、わかる。
ロッキーはケンが男性性の目覚めのきっかけになる映画として登場。
うんうん、わかる。

この実際のカルチャーを用いて映画を進行させることで
めちゃくちゃ分かりやすく、その上でユーモアもあるように描いているが
その反面、自身もこの映画に出てくる登場人物かのように錯覚させられて
ユーモアとアイロニーのバランス感が秀逸だと思った。
映画鑑賞中はテンション上がるし笑えるのだけど
映画を観終わったあとにあれ、自分もその感覚のままでいいのか?
と自問自答してしまうような作りをしているのは流石のバランス感。

後半にちょこっとインシンクネタが出てきたのは個人的には嬉しかったところ。笑
シングルの「It's gonna be me」のMVで
スーパーの操り人形のおもちゃになって登場するインシンクを指しているけど
日本人で果たしてが分かる人が何人いるのか。笑


マテル社のCEOがヒールになりきらず、
どっちつかずだったことにもやもやを感じてしまった
ただ演じていた俳優が「俺たちニュースキャスター」の人で
キャスティングの巧さはさすが。


フェミニズムゴリ押しの映画ではなく、
生きづらさを感じているのは男性も女性もだというスタンスがとても好感だし
そこに母親の苦悩もプラスして様々な方面から人々を救うメッセージを感じた。
バービーが「私は私」と気付かされ、納得する様子も
観客からしたら力強いエールとなる。
普通のバービーなんていないはずなのに、勝手に普通という型に押し込めてしまっているだけ。

最後ケンとバービーの戦いが終わり、男女それぞれの苦悩を描いたところで
物語の落とし所でバービーの生みの親が登場。
男女という枠組みを越えて、人間としての生き方を問うチャプターへ。
人間の世界に来た後のバス停での世の中の見方と、
美しいと感じたおばあさんがこのチャプターに繋がってくる。

バービーの生みの親が
「親は子のために出発点にいる」
と言い、人間の親子のなんともない記憶を見せるのは優しいシーンだった。
「チョコレートドーナツ」のような回想シーンは涙腺に弱いのもあるが
BGMで流れる"What was I made for?"と一緒に
生きる意味がじんわりと染み出して感じれるような美しいシーンだった。
大きな出来事がなくても、日常が愛おしいのであり、価値がある。
夢や目標を掲げて生きている人が偉い、というような世の中に
現在進行形で生きづらさを感じていたので諭されているように感じて泣いてしまった。

最後に人間として生きることを選び、仕事かと思いきや婦人科に。
個人的には人形だけど「母親」になるための第一歩としての婦人科だと感じた。


エンターテイメントも、メッセージも、希望も
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