好きではないが、巨匠がエンタメ性とか興行とか無視して好きに作った映画として貴重な作品だと感じた。けっこうコメディ風味だから見易い!
主人公が感情がない、というか自分というものがない存在として一貫して描かれていて興味深いし、しかし世渡りは上手いので上手く生きられる。しかし全てが崩壊して、いざ家族と向き合ってみると全く自分は分かっていなかったと思う。いや、彼は分かってなかったことさえ理解していない。彼にとってペギーや他の娘たちを愛している、守ったと思っているが、単に自分の所有物としか見ていない。
この映画で家族が出てくるのは主人公フランク家とホッファ家だけ。かたやホッファ家は妻と愛し合い、ペギーを娘のように可愛がる。
キューバ危機やケネディ暗殺、ウォーターゲート事件等が背景になりながら、一人の人間の物語として描く。くどくならず、後味はあっさり。
書いてて思ったけどこれスゴいことだ。ストーリーテリング、演出、テンポ、全てがおざなりにならず、四時間弱を退屈せず観れるよう描ききっている。
今年はなんだか老人が人生を振り返るモノが多かった気がする。『運び屋』『さらば愛しきアウトロー』『ラスト・ムービースター』…