Omizu

世界の終わりにはあまり期待しないでのOmizuのレビュー・感想・評価

4.0
【第76回ロカルノ映画祭 審査員特別賞】
『アンラッキー・セックス またはイカれたポルノ』でベルリン映画祭金熊賞を受賞したラドゥ・ジューデ監督作品。カイエ・デュ・シネマ誌ベストワンにも選ばれ、アカデミー賞ルーマニア代表にも選出された。

なるほどこれは規格外。こんな映画ラドゥ・ジューデにしか撮れない。過去の映画の引用、TikTok画面の挿入、ラストの手書きエンドロールなど現代社会のありとあらゆるものを使って描かれた風刺劇。

アンジェラという女性が交通安全ビデオ制作のため、ドライブしては取材対象となる人を探すというのが前半。後半は定点の長回しで撮影の裏側を映し続ける。

それだけの映画なのだが、ジューデ監督の手にかかればそれだけになるはずもない。『アンラッキー・セックス』もかなり実験的な映画だったが本作も負けず劣らず変な映画。

映像を簡単に消費し、過激な動画が出回る現代社会、ルーマニアだけでなく日本にも言えることを皮肉を込めて描いている。引用される映画は女性タクシードライバーを描いたもの。ある種の女性映画とも言えるだろう。ひいてはルーマニアの国家としての立ち位置、ロシアのウクライナ侵攻などにも話が及んでいく。非常に多角的な視点を持った作品だ。

これ以上の分析は私にはできない。専門家に任せたいが、ストーリーとしては単純なのに惹きつけられて最後まで観ることが出来る力のある作品である。かなり過激であることは言うまでもなく、日本で視聴できる機会は限られてくるだろう。JAIHOあたりでやってくれるかな?日本語字幕ができたらまたじっくり観たいと思わせられた。
Omizu

Omizu