"アイリッシュマン"ことフランク・シーランが闇社会に足を突っ込んだドス黒い自分史が絶えず語られる。全編約3時間半…観た後はやや疲労感があった。集大成的な風格がある。ともあれスコセッシの待望の新作となれば観ないわけにはいかない。単純に老いていく人生の虚しさ儚さ引いては後悔が鑑賞後に重くのしかかる。端的に実録犯罪ドラマのような重厚な感触で、悪に取り込まれる人間の様やそれが常能化するプロセスが平常の出来事のよう描かれる。オッさん同士のいがみ合いや一点を見つめる深刻な表情一つでシーンを牽引する本作は緻密に計算され尽くし文字通り"雰囲気のある"作品。ジョーペシやデニーロの競演はもちろんだが、それを裏社会の構図と掛け合わせてるんだからプロットとの相性も抜群である。総じて"ファミリー"の定型を意識しつつも規定路線に収まらない本作は観る価値がある。
