ボロロボ

アイリッシュマンのボロロボのレビュー・感想・評価

アイリッシュマン(2019年製作の映画)
3.8
ざっくり感想:いろいろとキビシイなあ・・・
※作品の良し悪しではないです。

全編通して描かれる【老いとの闘い】【同世代内でのけじめ】。

CG技術をアンチエイジング表現手段として使うことは否定しないけど・・・
もちろん、ジョー・ペシやアル・パチーノやロバート・デ・ニーロといった名優の演技を見られるのはありがたいけど・・・
「若いやつ」って言われても・・・
CG使っても限界はあるわけで。
もちろん、後半は違和感なし。

途中までは長く感じる。
しかし、ラスト一時間に辿り着くと、気にならなくなる。

ジミー・ホッファを演じるアル・パチーノは存在感たっぷり。

ラスとフランクとの間に漂う“えもいわれぬ何か”。リスペクトとか畏怖とか主従とか信頼とか、そんな簡単な言葉でまとめられるものではないよなあ(友情ではなさそうだ)。ちょっと違うかもしれないけど、「スター・ウォーズ」の皇帝とダース・ヴェイダーとの関係みたいかなあ。お互いに「コイツ使えそう、裏切らなそう」というゆる~い依存性、かなあ?
フランクのボスは誰か?
フランクは誰の懐刀か?

重厚感は抜群。
セット、大道具、小道具、衣装、トーンは素晴らしい。

観察眼の鋭いフランクの娘ペギー。
若者=次世代の代表として、フランクやホッファとの距離感を表現している。
次の世代は【お見通し】。子ども達だって距離をとる。

【別のトニー】のセリフが象徴するもの。
頑固で権力に固執する後年のホッファは何のメタファーか。
ラスト一時間はケジメの時。
老人が老人にとどめを刺す、引導を渡す。
ヤな世の中だ。

そして、ビジネスとしていろんな悪事をはたらいてきた連中が、年老いて刑務所に集合する様はまるで介護施設。ワルだって長生き。そして老々介護・・・。

老いて出所したフランクの孤独・・・。
「ジミー・ホッファ? 誰それ?」
時の流れは過去のあらゆるヒト、モノ、コトを押し流し、もはやフランクが我が手を汚す必要はなくなる。唯一残された自分自身のお片付けというミッションのために自分で段取りをつける。

メタファーとして捉えると、単なるギャング映画やクライムものでは済まない。
スコセッシ監督、今という時代に対して相当に苦い薬を処方してきたなあ。
「古きよきハードボイルドは死んだ」ということなのか?

インターミッションがないので、映画館ではなく自宅観賞でよかったと個人的には思ってます。
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