蜘蛛マン

アイリッシュマンの蜘蛛マンのレビュー・感想・評価

アイリッシュマン(2019年製作の映画)
3.8
長い。マジで長い。
会話もテンポも緩い。だからなのか、マフィア映画にも関わらず緊張感も昂揚感も感じない。粛々と主人公フランクの人生史を観せる、渋くて地味な作品だ。

まあでもそんなことは百も承知でこんなふうに仕上がっているのだろう。
監督も主演三人も全員アラエイ(around eighty)だからか、個人的には「老い」と「(老いから遡及的に振り返る)人生」がテーマとして強く感じられた。

フランクが迎える孤独なラストはゴッドファーザーpart3にも通ずるものがあったが、どちらの作品からも伝わるのは、人生に対する俯瞰した視点である。

末期が孤独(に関わらず悲劇的)であるならば、その過程である人生にはどんな意味があったのか?

フランクやマイケル・コルレオーネがマフィアだったから因果応報でそうなったみたいな受け取り方は自分にはどうしてもできず、もっと一般的な、どんな人生にも共通する虚しさとか淋しさみたいなものが感じられた。
こういう人生史はある意味ニヒリズムをもたらす話法だと思ったりもするのだが、フランクが過去にごくたまに見せる愛嬌のある笑顔を見たりすると、人生の瞬間瞬間がそれ自体祝福なんだと思えたりもして、というか多分それしか答えは存在しえないんだろうなと思う。少なくとも無宗教の身には。

映画としては法外に長いが、人生のなんたるかを伝えるにはどうしても必要な長さだったのかもしれない。
蜘蛛マン

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