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ノクターナル・アニマルズのとぽとぽのレビュー・感想・評価

ノクターナル・アニマルズ(2016年製作の映画)
4.5
「泣くのか?」この映画を見て神経が逆撫でされたか?言いたくても言えないことがあるか?吐きたくなったか?人殺しが楽しいか?ANSWER ME! You fucking bastard!!
クラシックでヘビーでスタイリッシュでクリーピーでストレスフルでチャレンジング、そんな冷えきった熱に帯びている。完全に対比された完璧な世界は突如脆く崩れ去り、顔面を殴打されたような感覚に囚われる。頭の奥の海馬に焼き付いて離れないイメージの数々。ネガティブな感情が喚起されても止めることのできない中毒性は、見る人を選ぶ作品になるかもしれないが、それだけ作る価値のあった作品に違いないとも思わせてくれる。リンチのように不気味でクローネンバーグのように挑発的でコーエン兄弟のように不条理でヒッチコックのように完璧、おまけにトミー・リー・ジョーンズのように南部テキサスを知り尽くしている。決して告発するわけではないが、南部の保守的な一面も浮き彫りになる。見終わった後の感情の処理・行き場に困る。見る者全てを傷付ける鋭さに気持ちの整理が追い付かない。
演者の熱量が見るものをその世界にいやがおうに引きずり込む。マイケル・シャノンとアーロン・テイラー・ジョンソンの演技が素晴らしい・凄まじい。特に激ヤセしたマイケル・シャノンの枯れゆく演技が好きだった。今まで彼の最高のパフォーマンスと言えば『テイクシェルター』の主人公で、他にも『MUD』や『8 Mile』『マン・オブ・スティール』等目がギラギラした役のイメージが強かった分、本作は歳を重ねたからこその新境地。コメディ演技のイメージの強かったアイラ・フィッシャーもすっかり母親に似合う女性に。ワンシーンしか出てこないけどスーザンの母親役のローラ・リニーもいい。
女性の裸も込みで気まずさの実力行使。きっと「自分以外のことを書いてみれば?」と助言されたエドワード・シェフィールドはスーザンに捧げるNocturnal Animalsを書き、その中で女房・娘のその先を書いたことで己の中で全て終わっていたのだろう。だからこそのあのエンディング。
「赤色でも黒色でも白色でも好きな色選んでおけ」ーーーーこんな感じの台詞が確か同日見に行った『THOR RAGNAROK』にあった。純血の赤、漆黒の黒、純粋の白ーーーーそんな感じ。全体的に洗練された作品だが、トム・フォード自身のブランド服が使われていなかったらしく、そこは好感度大。あと、原作からちゃんと現代に変更されている点も上手い。

「誰かを愛しているなら手放しちゃいけない」
ぼくは本作を見て、人を愛し抜くことの難しさと表現への向き合いかたについて考えさせられた。

「映画はサイレントで上映されるべき。台詞は物語を前に進めるときにのみ」
「自分の知ってることを書け」
監督二作目でこんな厄介な作品選ぶか普通?にしても普通に演出が上手いし、画作り・テンポが絶妙。
前作『シングルマン』がトム・フォードはファッションだけじゃなく映画でも素晴らしい才能を発揮することを証明する作品だとしたら、本作『ノクターナル・アニマルズ』は彼が如何に映画に夢中か、そして中途半端な気持ちで取り組んでいないかを示したマスターピース。
ヴェネチア国際映画祭グランプリ、ゴールデングローブ賞助演男優賞アーロン・テイラー・ジョンソン受賞、アカデミー賞助演男優賞マイケル・シャノンノミネート、、そうそうたる結果が並ぶ。また、エイミー・アダムスもジェイク・ギレンホールの演技も込みで冷えた熱が凄まじい。



TOMATOMETER73%、AUDIENCE72%
Well-acted and lovely to look at, Nocturnal Animals further underscores writer-director Tom Ford's distinctive visual and narrative skill.

ピーター・トラヴァース3.5/4
Plays With Truth, Fiction, Murder

美しい悪夢のような子守歌。
──タスティック・フィルム・マガジン

ヒッチコックの圧倒的な力、
デヴィッド・リンチの妖艶さを併せ持つ。
ゴージャスで、いつまでも心に残り続ける傑作。
──ニューヨーク・ポスト

混じり気のないウォッカのようにきつい悪意で
人の心を掴み、飲み込むミステリー。
──ガーディアン

トム・フォードは真の映画監督だ。
彼の情熱と独創性に疑いの余地はない。
──バラエティ

興奮!!
陶酔的で、挑発的で、美味。
──テレグラフ

愛と復讐を巡る警告の物語。
人生と芸術の間にうがたれた深い闇の中で、
現実の人物が虚構の登場人物に入れ代わり、
古傷が物語を駆り立てる。
──ニューヨーク・タイムズ

スタイリッシュ!
そして、強力な磁力を発揮する。
──USAトゥデイ

デヴィッド・リンチ+アルフレッド・ヒッチコック+ダグラス・サーク!
メロドラマであると同時に贅沢な心理スリラーでもある。
トム・フォードは人を酔わせる官能主義者であり、完璧なストーリーテラーであり、
色彩と構図だけでなく、登場人物の心理に対する
完璧な審美眼も持ち合わせている。
──ハリウッド・レポーター

心をとろかすほどに美しいスリラーのカクテル。
傲慢さと脆さを両立させたエイミー・アダムスが
魅惑的。
──ロサンゼルス・タイムズ

ノックアウト!!!
トム・フォードはすべての期待を上回る。
残酷さ、弱さ、私たちがお互いに相手に与えて
しまう痛みを描く、巨匠の作品。
エイミー・アダムズとジェイク・ギレンホールの
見事な演技がそれを高みに押し上げる。
──フィナンシャル・タイムズ

スマートでスタイリッシュ!
その見事な出来栄えに、見る者は心ゆくまでふけることができる。
──サンデー・ピープル

トム・フォードは映画に夢中だ。
傷つけられた人間性、
エレガントな外見の下に蠢く感情。
『ノクターナル・アニマルズ』は、過去の亡霊、
詩的な恐怖が通奏低音となって鳴り響くフィルムノワール。
その完成度に驚きを隠せない!!
──ローリング・ストーン

ランプも、登場人物も、ドレスも、
映画で描かれるすべてが的確だ。
エイミー・アダムスとジェイク・ギレンホールが
見事なのは言うまでもなく、
マイケル・シャノンは今年度最大のダークホースだ。
──ザ・サン 

まるで空想上の獣。
人を夢中にさせる、見たことのない獣のようだ。
──エンターテインメント・ウィークリー

純正なるリベンジ・パルプ。
暴力的で、復讐心に満ちている。
──シカゴ・トリビューン

『ノクターナル・アニマルズ』のすべてのショットは、ミリ単位で調整されたファッション写真の如く完璧なルックを備えている。
──タイム

エイミー・アダムスはうっとりするほど美しく、
同時に醜い。
そのすべてが一本の映画の中に詰まっている。
──KUTV CBSソルトレイク・シティ

簡潔にして不吉、そして蠱惑的。
人を元気づけ、夢中にさせるフィクションの
インパクト。
偉大な物語がいかに人の琴線を揺るがせるかを示す。
──リスト

腸(はらわた)をえぐる映画。
──NPR

見事なスタイルの映画。
この開かれた結末は様々な議論を呼ぶだろう。
──トロント・サン

強烈で、儚い感情をかき立てる。
この映画を見た人は、
「人生とは何なのか」という、
挑発的な疑問にとりつかれる。
──ワシントン・ポスト

『ノクターナル・アニマルズ』は
複雑で、知的で、完璧な映画。
──クレイヴ・オンライン 

人間ドラマであるとともにダークなミステリー。
とてつもなく面白い!!
──カット・プリント・フィルム

すべての場面からデカダンスとスタイルが
滴っている。
──プロヴィンス

デヴィッド・リンチ、デヴィッド・クローネンバーグ、スタンリー・キューブリックの血を継ぐ
野心的なミステリー。
──ヴォーグ

野心的な作品だ。
テキサスを舞台にした意地の悪いミステリーであり、
中年男女のメロドラマでもある。
しかし私たちが目にしているものの
先に隠された謎こそが、
この映画が指し示すものなのだ。
──インディワイヤー

物は人を幸せにしない。人生は短い。
消費主義の怪物を追いかけて人生を無駄にするな。
──シティAM

ハイ・アートと本能、まるで異なりながらも繋がっているふたつの場所と心のなかで展開する物語。
それはまるでダグラス・サークと
デヴィッド・リンチの衝突だ。
トム・フォードは自分が受けた様々な影響と
スタイルへのオブセッションを、
悪意すれすれの正確さで混ぜ合わせる。
──トロント・スター
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