黒田隆憲

ノクターナル・アニマルズの黒田隆憲のネタバレレビュー・内容・結末

ノクターナル・アニマルズ(2016年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

初見では正直、前作でありデビュー作『シングル・マン』の世界観を期待してしまい「良かったんだけど、思ってたのと違う……」という戸惑いの気持ちが入り混じっていたのだが、今回3年ぶりに見返してみたらあまりにも素晴らしくて続けて「おかわり」してしまった。
才能のなさ、野心のなさが原因で、過去に酷い捨て方をした小説家志望の元夫(ジェイク・ギレンホール)より、主人公(エイミー・アダムス)のもとに20年ぶりに小説が届く。暴力に満ちたその内容は強烈に彼女の心を捉え、夢中で読み進めるうちに彼と出会った頃のことや、過去に自分が行った仕打ち(身篭った子供を堕胎した上、浮気現場を見られる)を思い出していく。現在、美術商を経営し若くて美しい夫と豪邸を持つ彼女は、全てを手に入れながら満たされない思いを抱えていたのだ。
やがて彼女は前夫に連絡を取り、久しぶりの再会を約束するのだが、それは果たして懺悔の気持ちなのか、「焼け木杭に火」的な気持ちなのか、それとも単なる好奇心なのか。前夫が突然、彼女のもとに小説を送りつけたのは、未練なのか復讐なのか、それとも「成長した俺を見てくれ」的なものなのか。ラストシーンは、その時の自分の状態によっていくらでも解釈のしようがあって面白い。そして、衣装やメイク、美術や小道具などへのこだわりがものすごくてさすがトム・フォードです。最高。
黒田隆憲

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