くりふ

クイーン 旅立つわたしのハネムーンのくりふのレビュー・感想・評価

3.0
【“無婚旅行”だから見つけられたもの】

日本公開に向けたトラブルは幾つか聞いていたが、短縮版での先行公開後、ようやく完全版にて上映とのことで行ってきました。

強引にこじつけると『マダム・イン・ニューヨーク』の仕上がり・甘さに近く、アチラが自分探し“人妻篇”だったとすると、その“未婚女子篇”。が、部分的には惹かれたものの、全体ではずいぶん、薄味でした。

結婚式直前に、一方的に婚約を破棄された“地味女子”が、予定していた新婚旅行に独り旅立ち、その先で何を見つけるか…というお話。

インド本国では『マダム~』以上にヒットして、インド映画のヒット基準「100カロール・クラブ」入りを果たしたそうだ。目出たいと思う一方、この物語がそれだけ支持されるということは、インドの男尊女卑思想はそうとうに根深いのだなあ…と、ネガティブな感想も湧いてきます。

「インドに生まれた女は何も許されない」という台詞を象徴的に感じましたが、それはかなり、現実味を帯びたものなのだろうか。

とはいえ、退屈なところの方も薄くて、まあ楽しめました。主人公ラニ(クイーンの意味)を演じる、カンガナー・ラーナーウトの好演が大きいですね。はじめはじれったい人物なのに、気づけば惹かれている。

『クリッシュ』での、ムチムチカメレオン悪女しか知りませんでしたが、地道な演技をコツコツ積み立てる女優さんだったのですね。時折ひょいと、こちらの心に飛び込む表情も見せてくれます。

あと、『クリッシュ』でも存在感が見事だった、彼女のおっぱいは記しておきたい。こちらも微妙に演出されていたので。初め、胸にサラシでも巻いているような感じなのね。豊かではあっても窮屈に見せている。

それが、彼女の心が解放されるに従い…最後には、ダッシュシーンでピークを迎えますが…彼女のまさしくツイン・ピークスも、あらゆる呪縛から解放されたように…踊る!…劇場大画面でみてよかった!(←そこかよ)

彼女をサポートするリサ・ヘイドンも、カンガナー“おっぱいバレエ”前のセクシー担当でよかった。さすがモデル出身のナイスバ。自由と堕落の間からヒロインを導くメンターでもありましたね。『心 ~君がくれた歌~』でのKYバカ女もよかったが、コッチの方が嵌り役、儲け役でありましょう。

パリとアムスでヒロインを待ち受ける、悲喜こもごもの出来事に味わいはあるけれど、やっぱり終わってみると、この物語はこの程度の達成で終わっていいのか?という疑問が残ってしまう。これが今のインドなの!と言われればそうですか、としか返せないのだけれど。

他、注目なのは、善い日本人と悪い日本人、が出てくることでしょうか。善い方は、人物的には段々、受け入れられるのだけれど、両方とも何十年前のステレオタイプだよって造形。ちょっと差別的じゃね?とさえ感じました。

個人的には、印度女子の自立に纏わる近作としては、『マルガリータで乾杯を!』の方が、より見応えありましたね。

<2018.1.7記>
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