おっちゃん

母よ、のおっちゃんのネタバレレビュー・内容・結末

母よ、(2015年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

老い先短い元教師の母を思う女性が、仕事そして私生活のなかで葛藤するヒューマンストーリー。
主人公のマルゲリータは女性映画監督で、上手くコントロールできない仕事や親子関係などに苛立ち、自分を見失っていました。自信を失う中で存在感が揺らぎ、中途半端な自分に落ち込んでいくのです。人はそれぞれ「母」「父」「監督」などという役割を追わされていて、周囲もそれを期待しています。恐らく期待にはゴールはなく、一旦弱気になってしまうとどこまでも、悪循環にはまってしまうのです。その中でも「母親」という役割は絶対的な存在と信じていると、主人公の母親のように認知面の問題などからそれが維持できなくなってきたとき、周囲はあせりを感じ、取り乱していくのです。
しかし、母の死後、教師として送り出した生徒やその父兄、同僚などの多くの死を悲しむ声を聴く中で、結局どこまでいっても「役割」を超えて素晴らしい人物だったのだと気付くのでした。
それは、死の間際に主人公が語り掛けた「今何を考えているのか?」という母への問いに「明日のこと」と言ったその言葉からもうかがい知ることができました。
出自、家族関係、成育歴などを背景に、人はいろんな役割を背負わされています。しかし役割を超えたところの自分の懐の深さみたいなものは大事にしたいものです。
この映画を見た後に、今度帰省したとき母親の「母親じゃない」部分についても少し聞いてみようかなぁと思いました。