MasaichiYaguchi

東京の日のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

東京の日(2015年製作の映画)
3.5
東京の片隅で繰り広げられる、優柔不断で何を考えているのか分からないダメ男と、自分の感情に一直線で勢いで上京した訳あり女の恋愛模様を描く本作は、愛することや生きることの意味を我々に問い掛けてくる。
完成披露試写会で鑑賞したが、上映前の舞台挨拶でヒロイン・アカリ役の趣里さんをはじめとした女性たちから「こんな男は嫌!」と否定された佐々木大介さん演じる本田だが、このような男性って結構いるような気がする。
他人を傷付けまい、その場の雰囲気を壊したくないと、当たり障りのない原動をして取り繕う人。
白黒をつけず、自分の意志をはっきり表明しない、どっちつかずの中立を保とうとするので、結局何を考えているのか、又は何も考えていないと見做されてしまう人。
それらは本人の持つ優しさから発したことなのかもしれないが、人を傷付けないことで自分も傷付きたくないという思いが根底にある。
そして、そういう行動は本人が意図したこととは裏腹に却って人を酷く傷付ける。
そんな本田のところにアカリが転がり込んで奇妙な共同生活が始まったことにより、本田にも、アカリにも変化をもたらしていく。
感受性の強い少女の面影を残す趣里さんが、ある事情を抱えたアカリの心の揺れを繊細に表現する。
定職に就かず、アルバイトで根無し草のような生活を送る、無表情でヌーボーとした本田を、佐々木大介さんが今時の“草食系男子”としてリアルに演じている。
アカリや周囲の女性たちから投げ掛けられた様々な言葉、そしてアカリの決意によって本田の平静を装った心の水面に大きな波紋が広がっていく。
主人公たちが夫々明日に向かって一歩踏み出していくラストが爽やかな余韻を残す。