caramel

ダウンサイズのcaramelのネタバレレビュー・内容・結末

ダウンサイズ(2017年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ずっと観たいと思いつつ、
積ん読的に放っておいてしまっていた作品。
アトロクのディストピア特集で紹介されて
「いまかも」と思って鑑賞しました。

もともと、観たいと思っていた理由は
アレクサンダー・ペイン作品が好きなことと、キャストが魅力的なことだけだったし、「マット・デイモンが小さくなる」「もしかして、割とブラック・ユーモア的な要素あり?」みたいな感じだったから、
鑑賞前に、宇多丸さんや高橋ヨシキさん、この作品をディストピア作品として推したリスナーさんの考えを聞いてなかったら、
違う解釈をしていたかも。

この作品を鑑賞するにあたって、
いちばん念頭に置いていて良かったなと思ったのは、高橋ヨシキさんの「ディストピアの定義とは」という問いに対する、「そもそも、誰かのユートピアは他の誰かのディストピアなのでは」という考え方で、
その視点で見ると、登場するさまざまな人々の考えやちょっとした台詞にも意味が見えてくる。
すっごいよく出来てます。この映画。
伏線とかも、無駄がない。

笑ってしまうし身につまされるのは、
決して裕福でなく、でもつつましく暮らしていた夫婦が、
最高のユートピア体験ができるはず、
と求めて飛び込んだミニ人間の世界でも、
嫌なことはあるし(隣人が夜な夜な爆音で遊んでるとか)
その世界に慣れてしまうと、
さらに「新しい人類の一歩だ」と言って、
核シェルターみたいなものにみんなで入るんだ!みたいな人が現れること。

満足できない理由は社会や外側の環境でなく、自分の欲しいものを理解せず、
ひとのことを羨み、自分も同じようにしたら幸せになれるのではないかという考えだったり、人に羨まれることに幸せを感じているからではないのか?というメッセージだと思った。

あと、ミニ人間になったひとたちは
「対大人間」(もとのサイズの人間)というのがあるので、国境や人種のハードルが低くなっている感じがするのも興味深かった。

さらに、最後のシーンでは、
自分が満たされていれば、
言葉が通じずとも、思いやって生きることができる、という意図を感じた。

ものすごく濃くて、面白い作品です。
少し長いけど、頭をフルに使い、
考えながら見るとあっという間に見れちゃいます!

@WOWOW 録画
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