Tallow

ブルーに生まれついてのTallowのレビュー・感想・評価

ブルーに生まれついて(2015年製作の映画)
4.3
自分の中では「頼りないお父さん役」で定着していたイーサン・ホーク。芸術家、音楽家の奔放さ、ナイーブさ、弱さを巧く表現しています。あくまでもチェット・ベイカーが主役で音楽は脇役に徹して作られている点が一般的なジャズの敷居の高さを滲ませてポピュラー作品に落とし込んであり感情移入点が明確で、とてもイケていると思います。
ジャズの悪い面を結構強く描いています。ラストシーンのヘロインを使うチェット・ベイカーの音だけを聞いて去る嫁と拍手を送る観客。カルチャーと大衆の図式なんてこういう儚いものであるって言い切っている点は高く評価します。一方でマイルスが「禊ぎ」の済んだ後輩に対して「承認」する拍手を送る感じも気持ちが高揚します。
全編を通しての圧倒的な映像美も見応えがあります。
ジャズの好き嫌いに関わらず楽しめる良作です。

追記
「ジャズだし、シンバルならいいんじゃね?」って一瞬混乱しましたが、最高のタイミングでコリントの信徒への手紙一第13章・愛の賛歌の冒頭の一節を出してくるあたりニクいです。神と芸術家の関係性がその一点に込められている気がしました。
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