キャサリン子

ルームのキャサリン子のレビュー・感想・評価

ルーム(2015年製作の映画)
4.0
施錠された狭い部屋に暮らす5歳の男の子ジャックと、母親ジョイ。
彼女はオールド・ニックによって7年間も密室に監禁されており、そこで生まれ育った息子にとっては、小さな部屋こそが世界の全てだった。
ある日ジョイは、この密室しか知らないジャックに外の世界を教えるため、そして自身の奪われた人生を取り戻すため、部屋からの脱出を決心する…。

長い間世間から隔絶されていた彼らが、社会に適応していく過程を描いた作品。



オーストリアで実際に起こった事件を基に書かれた小説が原作だそうですが、本作は事件をセンセーショナルに描くのではなく、被害者の女性とそのこどもの心と身体を、時間の経過とともに丁寧に描いています。
無駄なシーンは一切なく、映像のみで心情などを語らせる大変静謐で上品な作品でした。
また、子どもの視点から物語は描かれているので、純粋で美しい叙情的な世界観となっており、全体を通して優しさに満ちあふれていました。
常に暖かい陽射しが降り注いでいるような心地よさと力強さを感じ、事件そのものは残酷で許し難いものなのに、この作品自体にはどこか癒しのような効果もあったように感じました。


はじめはママとしか口を聞けなかったジャックが、髪を切ってくれたグランマに放った一言。
「ばぁば、大好きだよ」

「私はダメなママね。ごめんね」と謝る母に対しては、さらっと「でもママだ」。


この子によって、家族はどれだけ救われたのだろう。



子どもは、大人が思っている以上にたくましい。
キャサリン子

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