このレビューはネタバレを含みます
Roomでの生活という究極の絶望から逃げ出す作戦を実行するシーンで観客全員の心拍数が館内に響く。それぐらい緊張感ある沈黙シーンが多々あるのが非常に特徴的。
脱出直後の生活もたっぷり描かれていて、テーマやメッセージの多くはこの部分に隠されていたと感じた。
観客は大人なのでどうしても最初は母親や家族の視点で状況を考えてしまう。親の苦悩や大人の事情についてとにかく想像する。
だがあるシーンを皮切りに、急にジャックの視点で考えさせられる。ジャックにとってはRoomが世界だったのだ。しかも結構好きな日常で幸せだった。想像上とはいえ友達も出来たし犬だって飼っていた。あのベッドも、あの空間も、ジャックにとっては居心地は悪くなかったのだ。彼は僕ら大人が思ってるいる以上に立派に成長していた。
そんな事を考えてると、再び大人の視点で考えてしまった。
あんな過酷な状況で、母親であるジョイは彼女なりの方法でジャックに最高の生活を送らせていたのだと。立派な大人になるためにちゃんと正しい方向へ向かって教育していた。Roomの友達たちに別れを告げる事、おばあちゃんに『I Love You』と伝えた事、病に倒れたジョイに自分の宝である髪の毛をあげた事、そして犬が好きになった事。これらの言動がジャックがいかに立派に育っているかを物語っている。あのプライムタイムニュースのインタビュアーが聞いた『子供だけでも外の世界に預けようとは思わなかったの?』という質問に対する答えが描かれていた。
これに気づい時に鳥肌が立つと同時に母親の偉大さを男ながらに感じた。
僕にとってこれは子育ての話。
そして母親の強さを改めて認識させてくれる話でした。最高に面白ったし、自分にも子供が出来た時に再び観るでしょう。