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ルームのmaiのレビュー・感想・評価

ルーム(2015年製作の映画)
3.9
すごく泣きました。
息子目線で話が進むので、母親の方の感情の揺れが比較的フラットに見れて(それでもその感情を想像するだけで泣いてしまうのですが…)良かったです。多分、この話が母親の方の目線で作られていたら、私は最後まで観れなかったと思います…。

7年間という時間を奪われた母親には、外に出れたという喜びもつかの間、「監禁していた男との間の子・ジャック」ということで、彼を心から受け入れてくれない実の父親との関係や、高校生〜の7年間という人生において凄く大事な時間を失ってしまったという事実、またメディアとの付き合い方…などなど、さまざまな問題が降りかかり、気を病んでしまいます。
一方で、5歳の息子・ジャックには、最初は居心地の悪かった外の世界も、次第に居心地のいいものへと変わっていきます(これは、ひとえにジョイの母とその再婚相手のおかげですね…)。
外に出た後の、ジョイの悩みや息子への接し方…また、ジャックがそれを機敏に察知しているところ…などなど、後半は物語が大きくは動かないけれど、そういった障壁を親子で乗り越えていく姿に感動しました。ジャックがほんの少し前までは駄々をこねたり、嫌なものは嫌と子供っぽく抗っていたのに、最後の方では「わかった」とあっさりと諦めたり、母親を慰めたりと一気に成長していて、そこでまた感動してしまいました。

簡単には言葉で言い表せないような「訴えかける何か」がこの映画にはあります。

個人的に、インタビュアーの女性が「ジャックをどこかの児童養護施設に送る考えはなかったのか?自分のそばに置いておくことを最良の方法だと思うか?」と聞いた時が一番辛かったです…。
最良かどうかは分からないけれど、ジャックにとってもジョイにとってもお互いは欠かせない存在で、外に出られた後の2人をみていると、支え合って幸せを掴もうとする姿には「2人で支え合ってきて良かったね」と本当に思いました。
辛い環境ではあったけれど、児童養護施設に預けていたら二度と会えなくなっていたかもしれず、そう考えると親子は離れるべきじゃなかったと思いました。

母親役の女優も、男の子役の子も、演技が素晴らしかったです。
2人だけの世界で話が進んでいくので沈黙も多いのですが、そんな中で2人の目が印象的でした。息子を見つめる温かい目、何かを睨んでいる目線、脱出の際の緊張を含んだ目…うまかったです。
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