pnz

ボブという名の猫 幸せのハイタッチのpnzのレビュー・感想・評価

3.8
“Good morning, monster. “

心が洗われた。
きっと原作からそこまで脚色せずに映画にしてくださったんじゃないかな、その現実味がすごく染みる。

薬物更生中のストリートミュージシャン、ジェームズ。11歳から薬物に走っていた彼は父親にも見放され路上生活を送っている。
ある日、ジャンキーのバズに誘われ再びヘロインに手を出してしまう。
更生員のヴァルに「最後のチャンスだと思うから」と与えられた家で新しい生活を始めると、目の前に1匹の猫が現れる。

ジェームズの視点、猫のボブの視点それぞれのカメラワークが素敵。
特にふたりが出会った場面はボブがジェームズの顔を見るシーンが多いながらも、顔の8割くらいしか視界に入ってない感じとかがたまらない(笑)

ボブと出会ってからジェームズの生活は少しずつ変わり始める。

ベティとの出会い
路上ライブでの集客
更生との向き合い
父親との和解

ボブと周囲の人々(路上ライブでの客も含む)との関わりで彼がもがきながらも変わっていく様が愛おしい。

この作品の良さは、全体的にポジティブなメッセージが多いだけじゃなくバズのオーバードーズ、ベティの兄のオーバードーズ、断薬期間だったりと綺麗事だけじゃない出来事が起きること。

上流階級気取ってボブを買わせろって言ってきたおばさんにもムカついたな、「それなら子どもを買わせろ」って返したジェームズ、正論。

イギリスの階級事情とかドラッグ事情に詳しいわけではないけど、ああこれが現実なんだな、っていうのをジェームズの人生を通して考えさせられる。

「どうしてキスは唇にするのかしらね」
そんなベティの問いから、手を合わせたり手首の”Live”にキスをしたりと、ほんの少しだけあるふたりのスキンシップがたまらなく愛おしい。
そしてこれはベティの成長物語でもあると思うんだよな。自立した女性ですごく素敵です。

欲を言えばボブに興味を持った方の娘ちゃんとかともう少し展開あってもよかったのかなーとも思うけど、そのへんは現実のジェームズに期待。
ラストのサイン会にジェームズご本人が並んでるのはアツかった…!

結論ネコチャンは癒し。
pnz

pnz